2020-04

2019・10・26(土)「放蕩息子」と「ジャミレ」

      東京芸術劇場コンサートホール  2時

 「東京芸術劇場コンサートオペラ」の第7回で、佐藤正浩指揮ザ・オペラ・バンドと国立音楽大学合唱団が出演。
 前半にドビュッシーのカンタータ「放蕩息子」が浜田理恵、ヴィタリ・ユシュマノフ、宮里直樹の歌で演奏され、後半にはビゼーのオペラ「ジャミレ」が、鳥木弥生、樋口達哉、岡昭宏の歌により演奏会形式で取り上げられた。

 「ジャミレ」とは、また珍しい作品を紹介してくれたものである。私もビゼーのオペラの中で、有名な「カルメン」と「真珠採り」の他には「美しきパースの女」と「イワン雷帝」を聴いたことがあるが、この「ジャミレ」は初めて聴く作品だった。彼の完成されたオペラとしては「カルメン」に先立つもので、もちろんこれが日本初演だろう。

 ジャミレというのは、ヒロインの女奴隷のことである。物語の内容からしてドラマティックな激しさなどといった要素はなく、むしろ色彩的で流麗な音楽が基調になっている。こうして彼のオペラを複数聴き比べてみると、「カルメン」という作品が、いろいろな意味で、如何に彼のオペラの中で特異性を放っているものであるかが分かるというものだ。

 歌手陣は、近年絶好調の樋口達哉が今日も小気味よいパワーで気を吐き、若い岡昭宏も楽しみな快演を聴かせてくれた。鳥木弥生は先日の新国立劇場の「エフゲニー・オネーギン」でのオリガの時と同様、濃いヴィブラートが気になるのだが、このヒロイン役を一癖ある女性として表現していた。

 前半の「放蕩息子」も好演だったが、浜田理恵の母親リア役が見事な貫録で突出して目立っていた、という感。フランスものでは定評ある人だが、今なお健在なのは嬉しい。

 佐藤正浩の指揮は、ドビュッシーでは清楚な透明感を表出し、ビゼーでは甘美な世界を描いて、今回も見事な出来だった。

コメント

素晴らしい演奏でした。

前半の「放蕩息子」における高声お二人の歌唱が印象に残りました。浜田さんが圧倒的な存在感を示して格の違いを見せつけ、宮里さんも(絶好調にはごくわずかに及ばないという感じが皆無ではなかったものの)素晴らしい歌唱でした。シメオン役のバリトンは些か単調な歌唱でしたが。

後半の「ジャミレ」は、前半に比べると少しスケールダウンした感がありましたが、島木さんは美しい舞台姿で聴衆を魅了し、樋口さんは(もう少し余裕が欲しいと思いましたが、)文字通りの熱唱で最高音の輝きはお見事でした。ノーマークだった岡さんの堂々とした歌唱は嬉しい誤算で、今後、注目したいと思います。

指揮の佐藤さんは、名手揃いのザ・オペラ・バンドから美しい響きを引き出していました(11日の大阪交響楽団定期で見事なソロを聴かせてくれた福川さん、さすがです)。個人的には、「放蕩息子」の最後の三重唱のところは、もう少しゆったりしたテンポで振ってほしかったですが、十分満足し、幸せな気分で帰途につきました。

 余談で恐縮ですが、神奈川県民ホールの「カルメン」の批評は、他都市の公演が終わってからでしょうか。

 演奏頻度が少ない両作品ですが、私も大体、東条先生のコメントように感じました。ただ、ジャミレの方の男声は、各々の歌手の方も初演であるとは思うのですが、発声面で少々、難が出てしまったのが惜しいところです。逆に、ユシュマノフ氏の方は、客観的にも作品を捉えつつ、技術的にも基本に忠実に、安定的に歌っていたところが評価できるように私は思いましたし、今後の彼の活動も注目したいところです。
 なかなか貴重な演奏会で、私としては満足度も高かったのですが、聴衆の入りがもう2つ、3つだったのが残念です。芸術の秋、ということで、他所でも多くの演奏会があったわけですが、こうした頻度の少ない曲、演目だと客足が伸びない、というのは、欧米でもそうだとは聞いていますし、理由もいろいろなのでしょうが、やはり残念なことです。
 加えて、この日も、罵声に近いようなかなりの大声のブラボーが浮いた感じで聴かれたのが残念でした。演奏頻度の少ないこの曲について、何を根拠として、何を比較材料として、どういった自信をもって声をかけているのか、当事者に説明を求めたいところです。
 

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