2020-05

2019・10・19(土)ピエタリ・インキネン指揮日本フィル

      サントリーホール  2時

 日本フィルハーモニー交響楽団が、首席指揮者ピエタリ・インキネンとともに、ベートーヴェン・ツィクルスを開始。ただしプログラムはドヴォルジャークのオペラ「アルミダ」序曲、「ピアノ協奏曲第4番」(ソロはアレクセイ・ヴォロディン)、「英雄交響曲」という選曲になっていた。コンサートマスターは田野倉雅秋。

 ドヴォルジャークのこの曲を加えたのは、インキネンがプラハ響の首席指揮者を兼任し、この作曲家を取り上げることにも力を入れているからだそうな。通常のツィクルスとは異なり、ベートーヴェンだけでやって行くという形ではないらしい。
 ━━この序曲を聴いたのは、私は実は初めてだ。トランペットにヤナーチェクの先駆のような使い方が聞かれるなどという、興味深い部分もあったものの、言っちゃ何だが、必ずしも印象に残る作品というものでもない。

 「英雄交響曲」は弦14型編成による演奏だが、コントラバスは7本を揃えており、低弦を充分に鳴らして、重厚な響きをつくり出していた。贅肉のない、明晰ですっきりしたスタイルながら、骨太で豊かな音をも備えたベートーヴェンである。インキネンが、スタンダードな編成規模を持つ日本フィルとの共同作業に際し、殊更にピリオド楽器的なアプローチを採らず、もちろん豊満壮大主義のサウンドなどを求めず、このように中庸を得た解釈を採ったのは、賢明な選択と思われる。

 第1楽章は、声部の交錯、均衡、音の緊迫感などの面などを総合して、ほぼ完璧に近い出来といってもよかったであろう。ただ、なぜか第2楽章と第3楽章では緊張感も、音の濃密さもやや希薄になったような感がないでもなかったのだが━━第4楽章途中からは盛り返して、若々しい勢いを以って全曲を結んで行った。
 1番フルートと1番オーボエも快調だったし、また3本のホルンは、明確で鋭角的な、ややピリオド楽器的な吹き方で、第2楽章【D】のあとの6小節以降の有名な個所(ここは3本で吹いていた)や、第3楽章のトリオ、第4楽章ポーコ・アンダンテのクライマックス【F】などで気を吐いていた。

 たっぷりした音でありながら、各パートが明晰さを保っていたこと━━特にチェロ・セクションはいい━━は嬉しい。
 ただ一つ、こうした音づくりの中で、いつもとは違う奏者が叩いていたティンパニだけには、大きな疑問が残る。今回は、太いドスンという音の、敢えて言えば旧式なスタイルの叩き方で、特に強く叩かれた時のEs音は、オーケストラ全体の音色を鈍らせ、濁らせた。これは、少なくともインキネンがふだん構築する清澄な音色とは全く異質なものである。万が一、これがインキネンの指示だったのなら、彼には些か疑問を呈さなければならないが・・・・。

 協奏曲を弾いたヴォロディンの演奏は透明な美しさがあり、インキネンのベートーヴェンとはイメージが合う。アンコールでのシューマンの「献呈」の音の綺麗さには驚嘆させられた。

コメント

ティンパニ

ティンパニは昔いたM氏だと思います。昔はよくて、私は好きだったのですが、最近たまにトラで出てくると、すっかり衰えていて、昔の面影がありません。そういう奏者を使うオーケストラのマネジメント能力にも、残念ながら、疑問を感じます。

ホルン

ステージ裏P席にての鑑賞のせいもありますが前日に聴いたN響チャイコフスキー4番と比べての音色、音程、音楽性についてあまりにも落差が大きくこのチクルス全曲鑑賞予定でしたが躊躇しております。木管グループの好演につては異論はございませんが。

指揮者からティンパニの音質まで指示することは稀だと思います。むしろ奏者が指揮者の音楽作りを忖度して、それに見合う音質を作るのが、理想でしょう。現役の首席奏者のほとんどは、日本フィルに限らず、それができますが、1世代前の奏者のかなりが、自分の音しか出せないのは、残念でした。

19日に聞きました。四番のコンチェルトの響き美しくなめらかでした。「英雄」の第4楽章、二階席でしたが、対抗位置のため、弦の響きと流れが、よく理解できました。インキネンは音楽に対して理知的なアプローチをしていると感じました。東条さんの、このブログ、毎回楽しみにしています。日本フィルの演奏だと、コメントが多いような気がします。

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ティンパニ奏者

ティンパニは上でもご指摘の通り、元首席の方で現団友の方でした。
私のティンパニ好きは彼の芽の積まれた密度が濃く温かい音色を聴いてからなんです。以前首席時代はモーツァルトなどであえて硬めのバチを使用し、張りのある音色を引き出したりしてましたが、今回は私もあまり印象に残ったとは言い難かったかなと思いました。

昔話

この演奏会に行かなかったのは失敗でした。
ティンパニーのM氏が退団後、団友として登板されてるとは知らず、日フィルを聴いても遭遇の機会はありませんでした。
私も元打楽器奏者ですが、M氏は素晴らしいティンパニストでしたね。
当夜を聴かず、引退後の衰えも見てない中での発言で恐縮ですが、、、
彼の現役バリバリ時代(80年代終り~90年代前半位?)、日本の各オケの首席ティンパニストの中で間違いなくトッフの実力だったと思います。
確実な技術と明瞭な表現。
極めて美しい音色への配慮と、音程を掴む感覚の良さ(ティンパニストは これが重要、かつ天賦的能力。奏者の位置では常に3つ位の音程が鳴っているのです)
アンサンブルを完全に意識しながら、同時に音をたっぷり前に出してゆくという 日本のオケマンに不足しがちな能力においても傑出していました。
当時の日本フィルが 機能性において比較的低く見られていたことと、広報・宣伝力やイメージの軽さ故(?)、あまり注目、評価されませんでしたが、彼ほどいいティンパニストは その後も見かけません。

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