2020-04

2019・7・25(木)バーンスタイン:「オン・ザ・タウン」東京公演初日

      東京文化会館大ホール  6時30分

 7月15日に兵庫県立芸術文化センターで観た「佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2019」の東京公演。

 配役等は概ね同一で、東京初日とあって、活気に富んだステージと演奏が繰り広げられた。歌手陣とダンサーたちも上手いが、多国籍オーケストラたるPAC(兵庫芸術文化センター管弦楽団)が実に達者で、感服する。佐渡裕も、こういうレパートリーにかけては、盤石の構えだろう。彼の最良の面が示された上演である。

 先日、ある重要な関係スタッフから、第2次大戦末期に作られたこのミュージカルには、やはり「戦争」が影を落している━━という見解を聞かされた。
 たとえば第2幕冒頭のクラブの場面で、ダイアナ・ドリームが「暗い歌」を歌っているとヒルディがそれを遮り、明るい歌を自ら歌い始める時に、それを「制服の水夫さんたちの要求」だと言い、水夫たちもそれを証明すると、アナウンサーやドリームが「それなら仕方がない」と引っ込んでしまうくだり。
 あるいは幕切れ近く、水夫たちや人々が「いつかきっとまた会える」と歌い合うくだり。
 そういう個所などに、その「影」が感じられる、と謂う。
 私も、それには全く同感である。

 ただ、私が7月15日の項で「屈託ない、良き時代のアメリカ」と書いたのは、そういう紛れもない「戦争の影」をも、すべてこのような明るいミュージカルの中に巻き込んでしまうことを可能にしてしまう、当時のアメリカの凄まじい自信と楽観性のようなものに震撼させられたからにほかならない。
 太平洋戦争の直後、私が幼い頃に街のあちこちで見た進駐軍の米兵たちにも、未だそういう雰囲気が漲っていたように感じられたのだ。

 それを最終的に木端微塵にしたのは、おそらくは1960年代のベトナム戦争だったろう。以降、アメリカは今になってもその屈折した心理に引きずられる状態が続く。いま、トランプ政権の下で「アメリカ・ファースト」を絶叫する人々の声は、その屈折した心理が形を変えて現れた、一種の悲鳴のようにさえ思われる。
 ━━そうした日々のさなかに、突然私たちの前に現われたのが、この、屈託ない時代のミュージカルなのだった・・・・。28日まで上演される。

コメント

音楽から歴史へ

音楽を通じて現代史を見直す見事な一文、感服しました

私は戦争や昔のアメリカは教科書の中で大した興味も持たず学んだ世代です。でも、ぜひこのミュージカルを鑑賞したいなあと思うぐらい、記事に引き込まれて読み入ってしまいました。

映画のほうを先に見てしまい行ったことにしたのだが......。佐渡/兵庫芸文管の快調な演奏は4/6日 we love Ⅼ.Bでの{プレルード.フーガ&リフス}の名演で予測できましたがうれしい限りです。
ちなみに佐渡さんがアシスタントしていた時この難曲をウイーンで振ったバーンスタイン 途中で止まった由。

 このオペラ公演の優れた企画として、西宮だけでなく兵庫県内各地で、安価でオペラの紹介のコンサートを巡回して行っていることが挙げられます。今回は内容も鑑みて、戦後の日米交渉に大きな足跡を残した、白洲次郎氏の出身地である、三田市での公演を拝見しました。
 内容的には、オン・ザ・タウンだけでなく、他のオペラ、他のバーンスタインの曲も絡めたものでしたが、初心者にもわかりやすく楽しい解説があり、関西を代表する、歌手3人と、ピアニストによる充実した演奏、演技が続きました。オンザタウンでは、水兵3人の内、1人はソプラノ歌手が務めましたが、他の2人との息もよくあって、元気な歌いっぷりが大変良かったです。また、別の曲の演技では、ソプラノ歌手が後ろに投げた本が、スッと立つ、といったミラクルまでありました。今後も、この企画が更に更にミラクルに発展してゆくよう、期待したいと思います。

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