2019-12

2019・7・17(水)大野和士指揮バルセロナ交響楽団

      愛知県芸術劇場コンサートホール  6時45分

 「トゥーランドット」公演のプログラム冊子には、「このオーケストラの訪日は24年ぶり」とある。
 確かにそう。1995年の5月に、エドモン・コロマ―という指揮者とともに来日していた。ただしその3年前の5月にも、バルセロナ・オリンピック公式認定オーケストラとして、音楽監督ガルシア・ナヴァロとともに来日したことがある。そしてこの2回ともに、「バルセロナ市立管弦楽団」という邦訳名称が使われていた。

 資料によれば、この楽団は、1920年代にパブロ・カザルスが創設したオーケストラを前身とし、1944年にエドゥアルド・トルドラの提唱により市民管弦楽団として再結成され、1967年にアントーニ・ロス・マルバを音楽監督として市立管弦楽団となった、ということだ。なお、大野和士の2代前の音楽監督が、大植英次である。
 メンバー表によれば、大野和士の現在の肩書は音楽監督。芸術監督にはRobert Brufauという人がいる。

 今回、オペラ出演の合間を縫って行われているシンフォニー・コンサートのプログラムのキーワードは、察するところ、「カタルーニャ」「バルセロナ」「カザルス」「鳥の歌=ピース(平和)」「スペイン」というあたりにありそうだ。
 何故また「第9」をやるのか?という疑問も、カザルスがフランコ政権を嫌い、スペインを去る時に、このオーケストラと最後に演奏したのが「第9」だった、という大野自身の解説を聞けば、納得が行く。そして今日のプログラムにも、そのキーワードに関連したものが見られる、というわけである。

 最初のワーグナーの「ローエングリン」第1幕前奏曲が、カタルーニャに関わりのある「モンサルヴァート伝説」に因んだものだということは、特にワーグナー・ファンにはすぐに解るだろう(これは大野自身も会場でのトークで話していたが)。
 2曲目には、2015年の「武満徹作曲賞」で2位となったバルセロナ出身のファビア・サントコフスキーの「2つの三味線とオーケストラのための協奏曲~カザルス讃&二重の影の歌」という新作が演奏された。しかも、その津軽三味線を演奏した吉田兄弟(良一郎、健一)は、アンコールとして、三味線による「鳥の歌」を演奏したのである。
 そして後半は、ファリャの「三角帽子」全曲と、アンコールとしてビゼーの「カルメン」前奏曲を演奏するという具合。かように、いかにも大野和士らしい、コンセプトの明確なプログラミングであった。

 大野は、1曲目のあとにマイクを持って立ち、オケの由来からカザルスから、モンサルヴァートから、さらに協奏曲とその作曲者について詳しく解説。丁寧ではあったがえらく長くて、後ろにオケが黙って控えているだけに、正直、ヤキモキさせられたのだが。
 しかし、なんせこの日はプログラム冊子がなく、配布されたのは曲目とメンバーを印刷したペラ1枚の紙のみ、いう愛想の無さだったので、彼の話は大いに参考になっただろう。

 その話題の「三味線コンチェルト」は、2つの三味線とオーケストラの双方に特殊奏法を多く取り入れた「現代音楽」である。演奏時間はおよそ20分。聴いた印象から想像すると、モティーフはおそらく、「森」「風」「鳥」といったものだろう。神秘的なイメージも織り込まれている。カデンツァ部分でのみ、津軽三味線らしいソリが高鳴る。
 あとでyou tubeで見たのだが、「森の中に吹く風、不気味な嵐、響く鳥の声━━その中を人(三味線)が逍遙して行く」という誰かの解説に出逢った。「逍遙」というには、この三味線の響きはすこぶる強烈である。PAが使われていたようだが、不要ではないか? その「けたたましさ」は、ミステリアスなイメージを吹き飛ばしてしまう。

 後半の「三角帽子」は、絶品だった。大野の気魄ある制御も壮烈を極めて素晴らしいが、自国の作品への共感を漲らせて熱演したバルセロナ響も圧巻だった。弦の音色の、豊麗で温かい、ソフトな美しさも印象的である。これは、今夜最大の聴きものであった。なおメゾ・ソプラノのソロ(マリーナ・ロドリゲス・クシ)は、オケの背後、2階席の一角に時々現れて歌うという具合になっていた。
 8時45分頃終演。

 スケジュールの関係で、このプログラムは東京では聴けないので名古屋まで聴きに行った次第だが、「三角帽子」に関してはその甲斐が充分にあったというものである。
 9時32分の「のぞみ」に飛び乗り帰京。

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