2019-12

2019・7・15(月)バーンスタイン:「オン・ザ・タウン」

      兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール  2時

 日帰りで西宮へ行き、「佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2019」として上演されているバーンスタインの「オン・ザ・タウン」を観る。

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提供:兵庫県立芸術文化センター  撮影:飯島 隆

 これは面白い。「良き時代のアメリカ」の、屈託ないミュージカルだ。
 舞台初演は1944年だが、1949年にジーン・ケリーやフランク・シナトラ主演でミュージカル映画化され、日本では「踊る大紐育」の邦題で公開された。その映画の方は、原典版に比べ、音楽のナンバーも順序も大幅に変更されていたし、またミュージカル映画としてもさほど出来がいい部類とは思えなかったのだが、今回オリジナルの形による上演に接してみると、改めてその良さが解る。バーンスタインの若き日のミュージカル音楽の活力と、アメリカ・ミュージカルの全盛期の熱気といったものが、この作品からも湧き上がって来るのだ。

 これは「佐渡裕プロデュース」のバーンスタイン作品としては、9年前の「キャンディード」(→2010年7月31日の項)に次ぐプロダクションだが、それに勝るとも劣らぬ力作であり、成功作といえよう。
 まずその佐渡裕の指揮と、兵庫芸術文化センター管弦楽団の張り切った演奏がいい。かなり賑やかだが、華やかで痛快無類だ。

 出演者は、ロンドンでのオーディションにより編成された歌手陣で、主演の「3人の水兵」がチャールズ・ライス、アレックス・オッターバーン、ダン・シェルヴィ。「ミス改札口」を含む「3人の恋人」がケイティ・ディーコン、ジェシカ・ウォーカー、イーファ・ミスケリー。
 その他、ピトキン判事役のスティーヴン・リチャードソンの貫禄ある声と押し出し、ヒラリー・サマーズ(マダム・ディリー)とフランソワ・テストリー(ダイアナ・ドリーム他)の怪演ぶりなど、脇役に至るまで粒が揃っているのが素晴らしい。
 多数の外国勢のアンサンブル・ダンサーも華麗だ。合唱には十数人のひょうごプロデュースオペラ合唱団も参加していた。

 演出(舞台装置、衣装とも)はアントニー・マクドナルド。目まぐるしい場面転換を巧みに処理し、スピーディなセリフと音楽と演技とで押して行く(これらの組み合わせの流れの完璧さは流石だ)。演技も微細で、脇役に至るまでリアルな芝居を見せており、これが舞台全体を引き締めるのに貢献している。
 第1幕の中盤過ぎからドラマは活気を帯び始め、第2幕では冒頭から華やかなミュージカルの色彩が炸裂する。全曲最後の構図など、気が利いているだろう。それはほんの1,2秒間の光景ではあったが、客席から拍手と一緒にワッという歓声まで上がったほどであった。

 なお、今回の字幕は大橋マリが担当しているが、これが非常に要を得て巧い。猛烈なスピードで飛び交う英語のセリフにもかかわらず、客席からは特に後半、笑いが絶えなかったのは、ひとえにこの解り易い、台詞の本来のニュアンスを生かした訳語による字幕のおかげだろう。例えば女性たちがピトキン判事の冷酷さに呆れ、激怒して浴びせる罵声「a-ha!」に、「あ、そういうわけ!」という捨てゼリフ的な訳を充てたあたりなど、秀逸であった。
 この人の字幕といえば、かなり前になるが、オペラ・コンチェルタンテでの「イドメネオ」や「ナブッコ」に付けた訳文が傑作だったのを記憶している。

 25分の休憩1回を含み、終演は4時40分頃。兵庫では7月12~15日、17日、19~21日の計8回上演で、チケット価格は12,000円から3,000円の間にあるが、最高ランク以外はすべて完売だというから、相変わらずこの劇場の集客力は大したものだ。なお東京でも、東京文化会館で7月25~28日に計4回上演される。もう一度観てみたい。

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提供:兵庫県立芸術文化センター  撮影:飯島 隆

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