2019-12

2019・7・14(日)プッチーニ:「トゥーランドット」

      東京文化会館大ホール  2時

 東京文化会館(東京都歴史文化財団)と新国立劇場の共同制作によるオペラ夏の祭典2019-20」の一環、大野和士指揮&アレックス・オリエ演出によるプッチーニの「トゥーランドット」。
 東京では、東京文化会館(7月12、13、14日)と新国立劇場(同18、20、21、22日)で上演され、以下提携公演としてびわ湖ホール(7月27,28日)と札幌文化劇場(8月3、4日)でも上演されるという大規模なスケジュール。

 配役はダブルキャストで、今日はイレーネ・テオリン(トゥーランドット)、テオドール・イリンカイ(カラフ)、中村恵理(リュー)、リッカルド・ザネッラート(ティムール)、持木弘(アルトゥム皇帝)、桝貴志(ピン)、与儀巧(パン)、村上敏明(ポン)、豊嶋祐壱(役人)。合唱は新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部、びわ湖ホール声楽アンサンブルの合同(合唱指揮・三澤洋史)、TOKYO FM少年合唱団。大野和士(指揮)、カタルーニャ州立&バルセロナ交響楽団(この楽団名に関してはスペイン国内の複雑な政治的問題が絡むが)。

 舞台美術はアルフォンス・フローレスによるもの。威圧的な灰色の巨大な壁が三方を囲んでそそり立ち、左右の壁には階段を配したメカニックな舞台装置だ(注1)。トゥーランドットや老皇帝が住む宮殿は、上方からの巨大な吊装置を使って表現される。

 そしてこの舞台装置は、完璧な反響板の役割をも果たしており、ソリストの声と合唱とを強い音圧で客席へ響き出させるのに役立っていた。
 ちなみに、合唱の人数は必ずしも多い方ではないが、舞台装置の構造上の援護のためもあって、すこぶる強靱なパワーを発揮し、オーケストラの咆哮に呼応して、些かも引けを取らない。ソロ歌手陣━━特に主役の3人が強力で好調だったのも有難く、豪壮な「トゥーランドット」の演奏をつくり上げていた。

 ただし舞台上の景観は、豪華絢爛なものとは程遠く、むしろ暗い。ドラマが威圧的な灰色の壁に囲まれた、閉鎖され、抑圧された空間に繰り広げられるのに加え、リュック・カステーイスの衣装とメイクが、民衆を極度に貧しく、おそろしく薄汚い顔と身なりで描いているので、いっそう息詰まるような舞台になる。

 ラ・フラ・デルス・バウスのメンバーのひとり、アレックス・オリエのこの演出は、基本的には比較的ストレートな手法なので、所謂「謎解き」に気を遣うようなことはない。
 ただし━━プッチーニの未完の部分は一般的なフランコ・アルファーノの補訂完成版が使用されてはいるものの━━エンディングの演出については、ト書きとは異なる解釈が織り込まれている。今日以降もまだ上演は多いし、見せ場がネタバレになっては申し訳ないので、ここに詳細を書くのは差し控えたい━━といっても、もう知られているだろうが。

 いずれにせよオリエは、それがハッピーエンドにならないことを事前に示唆していた。それは、このオペラのストーリーの流れの上でも、またプッチーニのオペラの流儀の上からも、当然の成り行きだろう。今回採られた手法とは別に、もう一種類の手法もあり得たはずだが、それはまあどちらでもそれなりに辻褄が合い、納得の行く幕切れになっただろうと思う。

 字幕は、日本語版(増田恵子、読み易い)と英語版が表示されていた。客席は文字通り超満員。日本のプロダクションによるオペラ上演でこれだけ満席になったのは、戦後の一時期は別として、稀有のことと言っていいのかもしれない(注2)。

(注1)この舞台装置は、組立てに何と40時間を要した由。新国立劇場上演用と併せて2組が製作されたそうである。
(注2)昭和30年頃だったか、マンフレッド・グルリットが指揮、大谷冽子が題名役を歌った「蝶々夫人」で、日比谷公会堂の1階と2階の客席が左右の通路まで立ち見客で埋まっていたのを見たことがある。私も立ち見の1人だったが。

コメント

「衝撃のラスト」と宣伝されていましたが、DVDが出ている20年前のバルセロナ・リセウ大劇場、ヌリア・エスペル演出のプロダクションと全く同じ手法で、そのことがむしろ「衝撃」でした。

ああん、こういちさん!
ネタバレやんwww

いや、問題ないですw
オリエも、エスペルと同じスペイン人ということで…
影響があったんでしょうかね??

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