2020-07

2019・7・7(日)広上淳一指揮京都市交響楽団 大阪特別公演

     ザ・シンフォニーホール  2時

 つい先ごろ東京公演をやったばかりのコンビだが、絶好調のオケだし、大阪での演奏会だし、曲目も面白いので、聴きに行く。

 ベートーヴェンの「英雄交響曲」を最初に演奏し、休憩を挟んでヴェルディの「運命の力」序曲と「仮面舞踏会」前奏曲、最後にレスピーギの「ローマの松」という豪壮なプログラムだ。アンコールは同じくレスピーギの「《リュートのための古い舞曲とアリア》第3組曲」から「イタリアーナ」。コンサートマスターは泉原隆志。

 この中で素晴らしかったのは、何といっても「英雄交響曲」の演奏である。それはもう、「不動如山━━動かざること山の如し」という言葉を連想させたほどの演奏だった。
 だがこれは、硬直しているとか、推進性がないとかいう意味では全くない。むしろ揺るぎない不動の風格を備えた構築の演奏、とでも言ったらいいか。自然体のイン・テンポで、あざとい小細工も誇張もなく、ひたすら滔々と押して行くその演奏は、このシンフォニーがもともと備えている強靭な力感と美しさを、歪めることなく十全に発揮させたのである。強い説得性を持った、見事な演奏だった。

 ベートーヴェンの管弦楽法が如何に隙なく構築されているか、そしてそれが如何に多彩で表現力に富み、完璧なものであるか━━それを率直に、しかも明晰な形で再現してくれる演奏に出逢うことは滅多にない。が、今日の広上淳一と京都市響の演奏は、その稀有な例であったと言っても言い過ぎではない。
 しかもこのホールは、アコースティックの上でも、その演奏にはぴったり合っていた。実に快い体験であった。

 「ローマの松」では、金管群のバンダは正面のオルガンの下に配置された。その周辺に座っていたお客さんたちにはどうか判らないが、大半の聴衆にとっては、音響的にもバランス良く響いたであろう。「ジャニコロの松」での叙情性は素敵だったし、「アッピア街道の松」でローマ軍が霧の中から次第に姿を現して来るあたりの設計も、ミステリアスで見事だった。ただいずれにしても、この曲には、このホールはやはり小さすぎるようである。
 
 広上に率いられた京響は、やはり好調である。ただし、好調度が安定したのと引き換えに、ステージ上の楽員たちの顔は、以前に比べて無表情になって来た。
 特に今日は、カーテンコールの際に、誰とは言わないが前の方のプルトに、猛烈に不機嫌な顔をして、指揮者のことが気に入らぬと言わんばかりに、早く引き上げたいような表情をしている男性奏者が見えた。こういう小さいホールだから、甚だ目立つのである。演奏だけちゃんとやっていれば文句はあるまい、というものでもないであろう。

コメント

京響in大阪

先生、いつも楽しみに拝見しております。とくに関西公演は私もいる事が多く、レビューを教本よろしく勉強させていただいております。
この公演、私もおりました。少し不思議なプログラムでありましたが、スペシャルな公演と言う事で深く考えないようにしました。
演奏は前プロも後プロもたいへん楽しめました。先生もおっしゃってるように、エロイカ交響曲の真価がよく分かる演奏であったと思います。どちらかと言うとロマンティックな演奏でありましたが、曲は1番2番と言う古典の系譜に連なってる、しかし大きく加速度的に進化してると感じさせる自然な演奏が快かった。
この日の演奏は金管、特にホルンが私には本当に良くて感じ入りました。
広上×京響もマンネリしてきてもおかしくない時期ですが、今なお良好な蜜月にあると思いました。
なお、楽員の表情についてしばしばお書きですが、ほぼ毎月聴いてる私からするとそんなに変化はないと思います。またご指摘の男性楽員はなんとなく分かりますが(笑)、おそらくいつもそういう表情の人だと思います。

同感です。

東京公演の方にも、コメントさせていただきましたが、確かに演奏は素晴らしかったですが、カーテンコールでの笑顔が消えました。仏頂面の女性も多かったです。なんだか残念でした。

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いつも楽しく拝読しております。
初めての京響、三度目のザ・シンフォニーホールへ向けて早々にチケットを取って、このゴージャスなプログラムを楽しみにしておりましたが、どうしても行けなくなり大阪の方にチケットを譲りました。
残念だった分、東条様のリポートを興味深く拝読しました。「英雄」には最適で「ローマの松」には小さすぎるホールであるとのこと。なるほど、言われてみればそういうことなのかなと思いました。
ローマの松。私の席は正にバンダの目の前辺りだったろうと思います(笑)。最後のお話は残念ですが、数年前から東条様の評価も高い京響を、近いうちに必ず聴きたいと思っております。

ザシンフォニーホール

ザシンフォニーホール、演奏者にやさしいホールだと思います。薄いオケも厚く包んでくれるような、ここでリヒテルやチョン・キョンファを聞いたこと思い出す、最近は懐が寒いので外来オケは行きませんが。ローマの松はカラヤンがここで振ったのを録画でよく見ますよ。確かにマーラーやブルックナーの曲など反響してこだまが出ることがあるのは確かですがこの音響は捨てがたい。ウキウキさせる大阪の自慢のホールである。

 ちょっと論点がずれますが、ザシンフォニーホールは私も数回か行ったことがあり、好きなホールです。
 ただ、友人の話だと、数年前、外で買ったお菓子を飲食スペースで食べてはいけないと、ホールのスタッフにかなりきつく禁じられ、不愉快な思いをした、と聴きました。(スペースはガラガラだったとのこと。注意したスタッフは元、関西の某オケの打楽器奏者のようです。)また、近年では館内放送で盛んに、「指示に従えない人は退館していただきます。」という内容も聴かれたり、公演によっては上の方の席で、一人だけ立ち上がって、浮いたブラボーをしつこくかけている人いて、折角の公演に水をさし、会場が白けてしまうのに、こうしたことについては、あまり改善がないとのことです。この日のコンサートでも、会場で、あるいは舞台裏や諸々のスペースで何かあったのでしょうか。関東では、年々、ブラボーや拍手が過剰な人が増えて困っているものの、上記のようなトラブルはあまり見かけないので大変、心配です。

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