2019-09

2019・5・11(土)山形交響楽団 阪哲朗常任指揮者就任記念定期

      山形テルサホール  7時

 山形交響楽団を「明るい」オーケストラにし、かつ全国的に知名度を高めるという絶大な功績があった音楽監督・飯森範親は、このたび「芸術総監督」になった。

 替わって、以前、首席客演指揮者を務めていたこともある阪哲朗が、この4月から「常任指揮者」に迎えられた。アイゼナッハやレーゲンスブルクの歌劇場音楽総監督などを歴任し、ドイツでの活動が多かった阪哲朗にとっては、これが日本での最初の常任ポストになる。
 彼は京都生れのはずだが、御両親の故郷は山形なのだとか。なお彼には「阪・友の会」とかいうファンクラブが京都にあり、今日も少なからずの会員が聴きに来ていたとのことであった。

 さて、その就任記念の今月定期。プログラムは、第1部にメンデルスゾーンの序曲「美しいメルジーネの物語」と、シューマンの「交響曲第4番」。第2部にはブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」(ソリストは横山幸雄)が置かれた。
 コンサートマスターは犬伏亜里。

 弦はいずれも基本8型編成(以前、私がよく聴きに来ていた頃には、たしか基本10型だった)。このホールはさほど残響が長くはないし、しかも阪哲朗は「縦の線」を厳密に合わせるタイプの指揮者ではないから、それらの要素を含めた上でこの弦の編成でドイツ・ロマン派の作品を演奏するのは━━必ずしも容易ではないかもしれない。
 今日は、それもあってか、あるいは2日公演の初日ということもあってか、メンデルスゾーンの序曲や、シューマンの交響曲の最初の部分では、以前に比べアンサンブルの緻密さが薄らいでしまったか、という印象を抑えきれなかった。だが、演奏の強い推進力という点では確固たるものが感じられたので、まずは安心。

 特にシューマンは、メンデルスゾーンとは全く異なる暗く重々しい響きで開始されたので、阪と山響の意図は明確に伝わって来る。そしてこのシューマンの「第4交響曲」の演奏は、アンサンブルは別として、第1楽章の展開部あたりからあとの陰影に富んだ情感は目覚ましいものがあった。特に第4楽章へのクレッシェンドのくだりでは、ミステリアスな雰囲気も満ち溢れて、すこぶる見事だったのである。

 ブラームスの壮大なピアノ・コンチェルトをバランスよく響かせるには、オーケストラの規模とこのホールの音響との関係の上からも、更に難しいものがあったのではないか。横山幸雄も、かなり神経を使って弾いていたようにも感じられたが━━しかし、叙情的な第2楽章を経たあとの第3楽章では、見事なまとまりが聞き取れた。

 どの曲でも、尻上がりに均衡のとれた演奏になって行った。それゆえ、明日の2日目は、おそらく最初から良いだろう。そして指揮者とオーケストラの呼吸が更に合って行けば、いっそう素晴らしいものになるだろう。

 開演前のロビーコンサート、阪哲朗と西濱秀樹専務理事とのプレトーク、終演後のロビーでの指揮者とソリストと聴衆との交流会、楽員たちがロビーで客を見送る光景━━ありとあらゆる手を尽くして演奏者と聴衆との融合を図るというこの楽団の姿勢は健在だ。
 徹底した自助努力、発信力の強化、聴衆や支援者の拡大へのさまざまな活動などを通じ、東日本大震災の影響で悪化した経営状況も改善され、定期演奏会の平均入場者数と総入場者数も2014~2015年頃に比べ大幅に増加して来たというデータも出ている。
    別稿 モーストリー・クラシック8月号「オーケストラ新聞」

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