2019-07

2019・3・25(月)クシシュトフ・ウルバンスキ指揮東京交響楽団

      サントリーホール  7時

 かつては、この東京響の首席客演指揮者を務めた時期もあった若手ウルバンスキ。かなり個性のはっきりした表現を聴かせて人気を集めた指揮者だ。今でもそれを忘れられぬ人が多いようである。
 この人、個性が明確といっても、殊更に奇を衒うようなタイプではなく、また何を指揮しても独特の癖を出すという人でもない。古典派やロマン派、あるいは現代音楽のレパートリーにおいて、いろいろなスタイルを採りながら意外なやり方で作品から新しいイメージを引き出す、という指揮者のように感じられるのだが━━。

 その一例が、この日の第2部で演奏されたショスタコーヴィチの「第4交響曲」だ。
 たいていの指揮者は、この作品に投影されている破滅的な戦慄感を浮き彫りにした表現を採るものだが、今回のウルバンスキと東京響ほど、その恐怖感のようなものを綺麗さっぱり拭い去ってしまい、むしろ明るいエネルギー性をのみ優先して構築した感のある演奏を聴かせた例を、私は他に知らない。

 あの弦楽器群の狂気じみた疾走も、全曲終結近くのティンパニの乱打を含む狂乱怒号も、今日の演奏では、全く「怖くない」のだ。単なる流麗なクライマックスとして、あっさりと通過してしまうのである。その恐るべき喧騒が次第に遠ざかり、白々とした虚脱感に入って行くはずの最終部分でも、ウルバンスキは、ただ美しく音色を変化させて行くのみである。
 しかし、それらのすべてが、ただ無機的な演奏に堕しているのかというと、決してそんなことはないのだ。それは、東京交響楽団(コンサートマスターはグレブ・ニキティン)の、均衡豊かな演奏によるところが大きいだろう。その華麗なる威力あるアンサンブルは、見事なものであった。

 いずれにせよ、こういうショスタコーヴィチの「4番」像もあり得るのか、と少々驚いた次第だが、私の好みから言えば、興味深いとはいえ、あまり賛意を表しかねる、というのが本音である。

 なおプログラムの第1部では、美女ヴェロニカ・エーベルレがモーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲第5番《トルコ風》」を弾いた。繊細で美しく、しかし第3楽章などでは艶と凄味のある低音を垣間見せる。ソロ・アンコールではプロコフィエフの「ソナタ作品115」の第2楽章を披露した。

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