2019-10

10・28(火)エルヴェ・ニケ指揮ル・コンセール・スピリテュエル

  東京オペラシティ コンサートホール

 フランスのバロック・オーケストラ、待望の初来日。
 舞台は壮観だ。中央に基本8型編成(コントラバスは4本)の弦楽器群が構え、その後方に17本のオーボエ、8本のファゴット、2本のコントラ・ファゴットが位置し、9本のホルンと9本のトランペットおよび一対の打楽器がそれぞれ舞台の下手側と上手側に並ぶ。
 これらはすべてピリオド楽器で、人間の背丈の2倍ほどもある高さのコントラ・ファゴットや、左手を腰に当て半身に構え、右手だけで楽器を持って吹かれるナチュラル・トランペットなどは、とりわけ注目を集めたであろう。

 プログラムはダンドリューの「戦争の描写」を皮切りに、ヘンデルの「水上の音楽」第1,2,3組曲、「合奏協奏曲」作品3の4と5からの組み合わせ、そして「王宮の花火の音楽」組曲。
 作品によって楽器の編成は変えられる。弦と木管群のみの演奏があったり、オーボエとファゴットの一部がリコーダーと持ち替えられたりする。

 舞台の光景も賑やかだが、演奏も実に賑やかでダイナミックだ。荒々しく野性的なほどに咆哮するホルンやティンパニをはじめ、あらゆる楽器が力強いタッチで鳴り響く。「王宮の花火の音楽」など、あのように豪快なサウンドとエネルギーで演奏されたものは、かつてのコレギウム・アウレウム合奏団のレコード(ただし録音で聴く演奏のみ。ナマではずっと柔らかかった)以降、なかなか聴く機会のなかったタイプで、痛快だ。その一方で弦楽器群は、「合奏協奏曲」などできわめてしっとりした美しい音色を聴かせていた。

 これらには野外の祝典演奏、といったイメージをも感じるが、それとは別に、ヨーロッパの人々の多様な音楽の受容の仕方というものをいろいろ考えさせられることもたしかである。
 いずれにせよこういう時に、アンサンブルがめちゃくちゃだとか、トランペットが(ヴァルヴのないナチュラル・トランペットなのに!)速いパッセージで音を外したとかで文句を言うのは、野暮というものだろう。ましてブーイングなどする人の神経は、私には到底理解できない。とはいえ正直なところ、アンコールとしてもう一度演奏した「王宮の花火の音楽」の一部のような、完全にお祭りと化した音響には少々辟易させられたのも事実だが・・・・。

 思えば1992年にガーディナーとオルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティークが来日して、日本最初の「ピリオド楽器オーケストラによるベートーヴェン交響曲チクルス」を行なった時にも、アンサンブルが粗っぽいとか、金管が音を外してばかりいるとか――実際には「不安定」という程度、それも部分的にすぎなかったのだが――悪口ばかり言っていた人がいたっけ。

 舞台の上手側と下手側に分かれた金管群が交互に呼応して吹く音響効果は面白い。この効果は、冒頭のダンドリューの「戦争の描写」という曲で遺憾なく発揮されていた。
 昔、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルが来日した際にも、「塔の音楽」という作品でこの効果を巧く使っていたのを思い出す。またノリントンがシュトゥットガルト放送響とシューベルトの「ザ・グレイト」を演奏した時にも、ホルンとトランペットを舞台の上手と下手に離して配置し、第2楽章231小節からの両者が呼応するくだりを立体的に響かせるといった卓抜したアイディアを披露していたが、これも同じ発想だったのだろう。
  音楽の友09年新年号(12月18日発売)演奏会評
 

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