2019-11

2019・1・20(日)飯守泰次郎指揮新交響楽団「トリスタンとイゾルデ」

     東京芸術劇場 コンサートホール  2時

 アマチュアオーケストラの新交響楽団が、飯守泰次郎を客演指揮に迎えて取り組んだワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」。
 この日は、第1幕への前奏曲、第2幕全曲、第3幕の第3場(マルケ王たちが到着する個所から「愛の死」まで)が演奏されるというプログラムだった。

 アマオケと雖も半世紀以上の歴史と、数々の名演の実績のある新交響楽団、そのレパートリーも非常に広いが、久しぶりに聴いたこのオーケストラのワーグナーものの演奏は、実に立派なものであった。飯守泰次郎の円熟の手腕による制御のもと、極めて情感の豊かな、あたたかみのある演奏を繰り広げてくれた。殊更に絶叫しない語り口が、低音に基盤を置いた厚みのある響きの中で、ヒューマンな「トリスタン」を聴かせてくれたのである。

 第2幕終結近く、イゾルデが「トリスタンの行く国に私もついて行きます」と歌う暗い美しさに満ちた個所で、ホルンが惜しくも音を外した。ここは「ブランゲーネの警告」の個所とともに私が全曲中でいちばん好きなところなのに、と落胆したのだが、実はその時になって初めて、「そう言えばこれはアマオケで、吹いているのはアマチュアの人だったのだ」ということを思い出したのであった。つまりそのくらい、このオケ全体の演奏は見事だったのである。

 ━━批判しているのか、褒めているのか解らないような書き方になってしまったが、もちろん褒めているのであり、そのホルンのミスなど、全曲の演奏の中ではわずかな瑕疵でしかない。事実、全曲の掉尾を飾る「愛の死」における演奏などは、そのやわらかさと情感の豊かさにおいて、いかなるプロオケをも凌ぐほどの、素晴らしいものだったのである。━━こういう演奏は、もちろん飯守泰次郎の指揮でこそ、可能となったはずだ。

 歌手陣はオーケストラの後方、舞台奥に位置し、「警告」シーンのブランゲーネのみはオルガン横の高所で歌った。1階席中央後方で聴いた範囲では、その舞台奥の配置が適切であったかどうかは一概に断じ難い。
 イゾルデの池田香織、トリスタンの二塚直紀、ブランゲーネの金子美香、クルヴェナルの友清崇が充実した歌唱を聴かせてくれた。

 池田香織のイゾルデはもはや定番というべきもの。二塚直紀のトリスタンは以前に飯守指揮関西フィルの演奏会(2016年7月15日)で聴いて以来だが、力と美しさを備えた声だ。
 ただ、マルケ王を歌った佐藤泰弘には、もっと正確な音程と、丁寧で細かいニュアンスをこめた歌唱表現を望みたい。今日のような歌唱では、野卑で投げやりなマルケになってしまう。
 その他、メーロトに今尾滋、牧童に宮之原良平、舵手に小林由樹が出演。それぞれ出番はわずかだったが手堅く責任を果たしてくれていた。

コメント

アマチュアのオケ

 アマチュアのオーケストラの強みは一つの曲を半年ぐらいかけて練習してコンサートをやっていることだろう。ゆえに曲への理解ができた上で演奏しやすい。
 どうしてもソロ楽器はプロのようにはならないので特にホルンは(プロでも)難しい。その点を覚悟して行くべきだろう。
 最近ではカレン二コフの1番を演奏した浅野/大阪府大オケが分厚い弦の響きと若いエネルギーを爆発させて、いたく感動しました。

このたびはご来場ありがとうございました。
音を外したホルン奏者です。
観客の皆様、ソリスト、団員の皆様に心よりお詫び申し上げます。

無記名様へ

私は、拝聴していないのですが、どうかこれからも頑張ってください。応援しています。

当日聞きました。いい演奏でした。

つまらない演奏は前半で買えることも多いのですが、久しぶり?に最後まで聞きました。

ミスがなくても忘れる演奏より、ミスがあっても記録に残る演奏を聴きたいものです。

飯守氏のワーグナーといえば、5~6年前、ワルキューレの一幕を同時期に3回聞いたが、そのときもプロオケより飯守氏のアマオケの演奏が一番印象に残っています。

ミスを恐れず聞き手の記憶に残る、気合の入った演奏を期待しています。

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