2019-01

2018・12・30(日)尾高忠明指揮大阪フィル「第9」

     フェスティバルホール  5時

 昼の山陽新幹線で大阪に入る。
 ベートーヴェンの「第9」を、大阪フィルのナマ演奏で聴くのは、1990年の朝比奈隆指揮、2015年の井上道義指揮の演奏に次いで、これが3度目になる。

 今回の「第9」は、現・音楽監督の尾高忠明の指揮で、今年5月に開始されたベートーヴェン交響曲ツィクルスの最終回にあたるものだ。
 その5月の第1回(1番と2番他)と、7月の第3回(5番と6番)とは私も聴いているが、何よりも尾高忠明の━━大阪フィルに緻密なアンサンブルを復活させ、外連のない正面切ったベートーヴェンを最良の状態で蘇らせた彼の指揮に好印象を得ていたので、その締め括りとなる「第9」をも聴いてみよう、と思ったわけである。
 今回の協演は、安藤赴美子(S)、加納悦子(A)、福井敬(T)、与那城敬(Br)、大阪フィルハーモニー合唱団。コンサートマスターは田野倉雅秋。

 期待にたがわずこの「第9」の最終公演では、隙なく構築されたアンサンブルと、柔軟でしっとりした息づきとを併せ備えた、堂々たる演奏を聴くことができた。大阪フィルがこれほど濃密でスケールの大きな、風格豊かな音楽を響かせるのを聴いたのは、私にとっては久しぶりのことである。
 こうした演奏によって、「第9」は、ここではまさに真摯な気品を備えた音楽となっていたのだった。第4楽章最後のプレスティッシモは一段と昂揚感にあふれた演奏で、聴衆を湧かせるには充分なものと言えただろう。尾高と大阪フィルの呼吸は、以前にも増していっそう一体化して来たようである。
 声楽陣もよく、ソリストたちはもちろん手堅いが、自然な共感を率直に歌い上げるかのような合唱団の姿勢もまた、好感を呼ぶ。

 こういう重量感のある、しかもストレートな「第9」は、この曲を初めて聴いた頃に浸った率直な感動を、私に思い起こさせてくれる。私にとって、年末の「第9」をナマで聴く機会はもうあまりないだろうが、そう言った意味でも、この尾高と大フィルの「第9」は、心温まる演奏に感じられたのである。

 「第9」が終ると、指揮者と声楽ソリストたち、および楽員たちは退場する。そして、暗くなったステージで、福島章恭(大阪フィルハーモニー合唱団指揮者)の指揮により、ペンライトをかざした合唱団が歌い始めるのは「蛍の光」だ。大フィル恒例の行事である。
 舞台は薄明に転じ、床からドライアイスのスモークが湧き出し、舞台の前面のオケ・ピットの部分が下がって行き、あたりには幻想的な雰囲気が満ちる。3年前と違い、合唱団員が歌いながら退場するという手法は、今回は採られない。やがて、歌が終りに近づくとともにペンライトも一つずつ消えて行き、いつしか場内は漆黒の闇となった━━。

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ヤノフスキーの第九

今年は第九をパスしたのだが(旧態然の演奏に魅力がないので)家でN響の第九をTVで鑑賞した、ヤノフスキーは第九を毎年のように指揮しているのだという。ドイツの中小都市では日本と同様に年末に第九をやっているとのこと、彼は第九のエキスパートなのだ。
快速テンポでクールでスリルに満ちた第九だった。テノール独唱の最後通常は男声合唱にマスクされるのだが抑えて聞こえるようにしていたのは痛快。通常歌わせるところも引きずらず切る。終結部も粘らず楽譜通りのテンポで押し切った。本名氏が15年前富田林の第九でやったのに近い。合唱からは不評だったが。
N響の第九としては近来にない面白いものだった。独唱、合唱も見事でした。

「どすと」さんのコメントですが、「旧態然…」とおしゃってますが、去年以前は聞いていらっしゃるようですし、各地で行われる第九だけでなく、音楽は良いものは良いし、聞いてみて始めてそのコンサートの良し悪しがわかるものだと思います。私もヤノフスキ氏は好きで、30年前から拝聴してますが、毎年やっているから即、第九のエキスパート、というのも変に思います。演奏回数が少なくても素晴らしい演奏をする方々も大勢いらっしゃるのですから。
 また、「どすと」さんは関西の方のようですが、NHKホールで実際に、何回かお聞きになっていらっしゃるでしょうか。テノールのことも、そういう演奏はたくさんありますし、比較として富田林の第九のことを引き合いに出されても…という感じです。また、内容についても、独唱については、個人的には、あまり見事とは言えないパートもあったように思いました。(筆者は富田林では拝聴の経験はありませんが、神戸、京都、大阪などで第九は今までに何度も聴いています。どの演奏会でも、独唱の方々が素晴らしいなど、その時々で、楽しめ、得られるものは多いように思うのですが。)

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