2021-06

2018・11・24(土)浜松国際ピアノコンクール 本選2日目

      アクトシティ浜松 大ホール  2時

 今朝の中日新聞はコンクールの記事を第1面に飾っているが、本選出場の日本人4人の紹介に曰く、愛知県東浦町出身の務川慧悟さん、静岡市葵区出身の安並貴史さん、福島県いわき市出身で名古屋市名東区在住の牛田智大さん、掛川市出身の今田篤さん━━といった具合。
 地元にゆかりの演奏者の活躍を慶ぶという心理は、私も35年前にFM静岡(現K-Mix)開局の際に4年間浜松に居住したことがあり、今でもこの街と人々とに愛着を感じているので、よく解るのだけれども・・・・。

 それにまた今回は、本選出場者6人のうち4人が日本人というのは、目出度いことには違いないが、実績ある国際コンクールとしては、果たして本当に歓迎されるべきことだったのか、どうか・・・・。
 かりにチャイコフスキー国際コンクールで本選に残った者の大半がロシア人だったとしたら? ショパン国際コンクールの本選出場者がほとんどポーランドのピアニストばかりという事態が起こったとしたら? いくら偶然そうなった、と言ったところで、外国の楽界からは、やはり色眼鏡で見られてしまうのではないか。 

 ともあれ今日、2日目には、今田篤、イ・ヒョク(韓国)、ジャン・チャクムル(トルコ)が登場して、やっと「国際コンクール」らしい状態になった。
 今田篤は、ヤマハのピアノを使用、チャイコフスキーの「1番」を弾く。力強い音でダイナミックに弾いたが、音楽としては生硬で、何かムキになって弾き過ぎるような感があり、しなやかさと緊迫感にも不足するきらいがある。しかし第1楽章では、テンポの調整などに工夫を凝らしていた。

 次に登場したのが、韓国のイ・ヒョク。ラフマニノフの「3番」を、ヤマハのピアノで弾いた。3次予選の結果から、牛田智大と並ぶ優勝候補として私が最も期待していた18歳だったのだが、不思議なことに今日の協奏曲での演奏は著しく素っ気なく、煌きのない、音色もくぐもったものになってしまっていた。3次での演奏で放射されたあの明るさが、何故かひとかけらも残っていないのだ。よほど体調でも悪かったのだろうか? 
 しかしそれでも音楽的な雄弁さは随所に現れていて、要所では演奏も密度の濃いものになってはいたが。

 最後に弾いたのが、トルコの長身痩躯の20歳、ジャン・チャクムルである。シゲル・カワイのピアノを使用して、リストの「1番」を演奏した。実に伸びやかで、豪快な演奏だ。叙情的な個所にさえも、ブリリアントな音色と表情を散りばめる。
 その演奏における、欧州の伝統的なスタイルとは些か異なる音楽のつくり方が非常に面白く、━━どこがどうという適当な言葉が見つからないのだが、たとえばフレーズの余韻をさっさと切り捨ててしまい、音の一つ一つを流麗に繋げることをせず、おのおのを際立たせながら、それらを目にもとまらぬ勢いで奔流の如く押し流して行く━━とでも言ったらいいのか、どうも訳の解らぬ表現で恐縮なのだが、とにかくそんな感じの演奏なのである。終曲での演奏は、華麗で鮮やかで、圧巻であった。
 私はこの豪快そのものの演奏を聴いて、ツワモノがトルコの刀を振りかざして大暴れしているような光景を連想してしまったのだが━━。

 とにかく、第3次予選では(帰京したため)聞き逃していたこのトルコの青年の大胆不敵な演奏に接して、牛田と優勝を争うのはイ・ヒョクではなく、むしろチャクムルの方ではなかろうか、と考えを変えたのはこの時である。3次での室内楽の演奏が終わった時にブラヴォーの声が飛んでいた、という話を聞いて、ますますその思いを強くした次第であった。

 で、6時から同じ大ホールで行われた結果発表。入賞者は以下の通り。
 第1位:ジャン・チャクムル、第2位:牛田智大、第3位:イ・ヒョク、第4位:今田篤、第5位:務川慧悟、第6位:安並貴史。
 他に各賞として、日本人作品最優秀演奏賞が梅田智也、奨励賞がアンドレイ・イリューシキン、室内楽賞がジャン・チャクムル、聴衆賞が牛田智大。
 小川典子・審査委員長の説明によれば、判定の根拠は、第3次予選(室内楽とソロの各演奏)及び本選(協奏曲の演奏)を併せてのもの、ということであった。とすれば、この順位は、まず妥当なところであろう。

 結果発表と表彰式の時にも、大ホールの客席は一般客で埋められた。それどころか、7時過ぎから行われた記者会見の場にも、少なからぬ数の一般客が詰めかけていたのである。浜松の人たちの、コンクールへの関心の高さを示す一例だろう。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」