2021-06

2018・10・6(土)モーツァルト:「魔笛」沼尻竜典指揮、佐藤美晴演出

      びわ湖ホール  3時

 序曲のさなかに物語の誕生を演技で描く「3人の童子」が象徴する人物は、モーツァルトと、シカネーダーと、・・・・もう一人は誰か? 

 ともあれ、冒頭のこの場面といい、あるいは幕開き直後の、受験勉強を強いられ発狂寸前になっている少年タミーノを救うべく、スプレーを噴射して周囲の大人たちをゴキブリか蚊の如く退治してしまう3人の侍女たちの場面といい、今年2018年6月17日に日生劇場で上演された時の舞台より、はるかに流れがよくなっているのに感心した。あれ以降、日生劇場で公演を重ね、甲府と大分でも公演してきた成果だと思われる。
 今回のびわ湖ホール公演は、この劇場のシリーズ「沼尻竜典オペラセレクション」の一環として行われたものだ。

 配役も合唱団も、前回(6月17日)に観た時と全く同じ。
 オーケストラだけが日本センチュリー交響楽団に変わっているが、この演奏は、なかなか活気があって、爽やかだ。ピットの中は見えないけれど、楽団事務局の話によれば、コンサートマスターに同団首席客演コンマスの荒井英治が、トップサイドには神奈川フィルの第1コンマス崎谷直人が座っていた由。

 オーケストラの響きの良さには、びわ湖ホールの音響の良さも好影響を及ぼしていただろう。沼尻芸術監督の指揮も冴えていて、今日はいつも以上に、モーツァルトの音楽の素晴らしさを堪能できた。そしてまた、モーツァルトがこの最後のオペラで、オペラのあらゆる様式を合体させた━━と謂われる所以が、その音楽の美しさとともに、より強く実感できたのである。

 歌手陣では、タミーノ役の山本康寛の成長が目立つ。パミーナ役の砂川涼子の伸びやかな歌いぶりも冴えていて、実に快い。
 パパゲーノ役の青山貴のコミカルな歌と演技もさらに見事で、前回にも書いたことだが、とてもこれがあの威厳たっぷりのヴォータンを歌う人と同じ歌手とは信じられないほどである。
 夜の女王役の角田裕子は前回同様に美しく劇的な声だが、今日はなぜかあの超高音の前後の音程がちょっと「決まらない」感。だが、娘を連れ去られた母の悲しさと怒りとの表情を使い分ける顔の演技の巧さは、すこぶる見事だ。

 前回気になったセリフの弛緩したテンポは、モノスタトスのモノローグの場面を除けば、少し早くなっているようで、全体としては聴きやすくなった。かなり「今ふう」のセリフが多いが、これはこの演出には合うだろう。
 その佐藤美晴の演出には活気があり、演技の細かい表現の点では、新国立劇場のケントリッジの演出などより、はるかに深く読み込まれていると言っていいほどだ。新解釈によるストーリーの上での整合性には、いくつか理解しにくいところや、納得できないところもあり、ザラストロの世界の変化の過程が唐突に過ぎるのではないかという疑問もあるが、全体としては面白い発想であると評価したい。

 終場面で、ザラストロと夜の女王が和解するくだりは、日生劇場での上演の時よりも、解り易くなっていた。頽廃したザラストロの世界で苦悩する者たちに憐みの感情を抱いて手を差しのべるタミーノの姿は、これはまさにパルジファルとも共通する解釈だ━━とは、今日舞台を観ている時に感じたことである。

 6時10分頃終演。明日の広島行きに備え、JRで新大阪に出て、駅前の「ホテル新大阪」なるところに投宿。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」