2021-06

2018・10・1(月)ブラッドベリ原作 白井晃演出「華氏451度」

     KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉  2時

 いきなり焚書の光景に始まる「華氏451度」。
 恐怖的な思想管理体制が敷かれた近未来の時代、本の所持は一切禁止され、人々はテレビやラジオ(携帯電話やスマホも)から流れる情報にのみ頼らなければならない。ゆえに人々はわずかその数日間の出来事や情報のみに支配されて生き、書物によって知るべき過去の「知性」に接する機会を妨げられ、知的な判断力を失っている━━というドラマだ。
 「華氏451度」というのは、紙が発火する温度のことである由。上演台本は長塚圭史。

 米国の作家レイ・ブラッドベリ(1920~2012)がこの原作のSF小説を書いたのは、1953年のことだという。当時のアメリカはマッカーシズム(赤狩り)の嵐が吹き荒れ、共産主義への恐怖感が拡がっていた時代でもあった。

 もっとも今日、この寓話に秘められた予言は、原作者が予想しなかったかもしれない形で現実化しているだろう。
 物語に登場する大学教授が言う━━「実のところ、ファイアマン(ここでは焚書を任務とする特殊部隊を指す)なんてほとんど必要ないのだよ。大衆そのものが自発的に(本を)読むのをやめてしまったのだ」(プログラム冊子掲載、白井晃のエッセイから)。

 自らその特殊部隊の一員だった主人公の青年が、その社会に疑問を抱き、僅かな数の人々ともに再生を目指すというラストシーンに、心ある観客は仄かな希望を感じるのみ、ということにでもなろうか。
 出演は、吉沢悠、吹越満、美波、草村礼子、堀部圭亮、粟野史浩、土井ケイト。上演時間は2時間弱で、休憩なし。10月14日まで上演。

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