2020-07

2018・9・30(日)奇策!びわ湖ホールの「千人の交響曲」繰上公演

 本来なら今日はびわ湖ホールの開館20周年企画、沼尻竜典指揮京都市交響楽団によるマーラーの「千人の交響曲」を取材に行く予定だったが、台風のため交通機関が途絶しそうなという見通しが昨日のうちに判明したので、涙を呑んで諦めた。

 ━━いずれにせよ本日の公演は中止となったのだが、これに際し沼尻竜典芸術監督とびわ湖ホールが採った奇策は、昨日(29日)午後に予定されていたゲネプロを、すでに仕上がり充分の段階という判断から「緊急特別公演」として有料演奏会に切り替え、企画(と制作費と)を無駄にしなかったという「妙手」だった。

 昨日、急遽ホールに足を運んだ佐藤千晴さん(元朝日新聞記者)のFBを読むと、30日のチケットを持っていた人は「本来の席」へ、当日券を買った人は開演5分前に「空いている席」へ、という方法が採られ、必ずしも満席にはならなかったものの結構な入りになっていた、とのことである。終演後の大津駅とのシャトルバスもちゃんと動くよう手配されていて、さすがはびわ湖ホール、と。(注、来られなかった人には払い戻し━━これはホールhpによる)
 演奏も、素晴らしかったそうだ。他の二、三の知人たちもそう言っていた(火事場の何とかということか?)。「やっただけのことはあった」とのこと。
 なお、この29日の繰上げ上演の件は私も連絡を受けていたものの、さりとてラトルとロンドン響の演奏会は聴きたし━━とあって、初めからこれも諦めていた次第である。

 この秋は、この他にも、9月に小泉和裕と九響、10月に小泉と名古屋フィル&中部フィル、井上道義と読響(東京芸術劇場)など、どういうわけか「千人の交響曲」がかち合う様相を呈しているが、結局、どれも聴けないで終ることになる。まあ、私としては正直なところ、この「千人」は、マーラーの交響曲の中では事大主義的で、唯一あまり好きではない曲だから、それほど落胆はしていない、のだが・・・・。

コメント

 前日遅くに「奇策」を知り、慌てましたが、何とか「奇策」にはまることができました。声楽アンサンブルの新旧、懐かしい顔ぶれも多く合唱に参加しており、その他関西の様々な声楽家たちも合唱に参加していたので、たっぷりボリュームのある声量、高音も良い響きで、今回の状況も含めて、歌手の方々の思い入れや意欲も存分に感じることができた合唱だったように個人的には思います。
 ただ、こうした点については、独唱の方々、とりわけ声楽アンサンブル出身のテノールの歌手などによく感じられたものの、あくまで個人的な感想ですが、何度もここでの演奏に携わっている京響に、あまり感じることができませんでした。カーテンコールでは、熱演のマエストロ沼尻氏の指名で各団員盛り上がってはいましたが、演奏として果たしてどうだったか、1日分の練習が欠けた仕方なさはあるとは言え、例えば、2部で、独唱までの部分でどれくらいオケが旋律を歌い上げ、音楽的な表現ができたか、あるいは全体的に意欲的なものがどれくらい聴衆に伝わったか、という事を考えた時、弦も淡々、木管などは何か恐々やっているような所も感じられ、物足りなさを各所で感じました。
 今回、コンマスが関東の某オケのコンマスの客演だったのも、この人が何回かここで演奏しているのは知ってはいるのですが、この記念すべき演奏会、という事を考えるとやや違和感を覚えました。おそらく、何年か前に、彼が地元でこの曲をやっているからなのでしょうが(結果はあまり芳しくなかったようです。)、演奏内容としても、結果的に団員を盛上げるタイプのリードではなかったように思います。自ら「硬派」を自任している人なので、手堅く、今回の臨時的な状況も含めて、いろいろ慎重ではあったのでしょうし、かっつりとした感じはあったのですが、同じ関東の団体出身のチェリストの様子も含め、何か伸びやかさ、豊かな表現への方向付けが今ひとつだったのが個人的には残念に思いました。
 数日後、芸劇で同じ8番を聴きましたが、こちらはマエストロ井上氏の指示の下、読響が曲の最初から表現と意欲に満ち満ちた演奏を繰り広げていたように思いました。合唱は音大学生の連合でした。びわ湖のようなプロの合唱にはさすがに及びませんが(高音の伸び、など)、意欲、若々しさ、吸収力なども(主観的ではありますが)感じられましたし、井上氏の信頼の高いベテラン独唱陣から得るものも多かったのではないでしょうか。また、これも個人の感想で恐縮ですが、FMでクラシックを聴きはじめた頃に創立されたFM TOKYOの少年合唱団の演奏も久々に聴くことができ、びわ湖と同じような懐かしい気持ちやこうして良い伝統が継続されていることへの喜びをも抱くことができました。祝祭的なこの曲について何をどう考え、何を求めてゆくのか、個人的にいろいろ考えることができた2公演だったように思いました。

今回の緊急公演を知らせるメールが届いた時は、まさに「神対応」だと思いました。東京なら、たとえ20周年でも絶対ありえない。おそらく3分の1程度の入りだったと思いますが、びわ湖の底力を見せつけられた気がします。

京響のコンマスがゲストだから良くなかったというご意見には賛同致しかねます。二人いた京響のコンマスうちの一人が最近退職なさり、もう一人も手の故障から復帰して間もない状況の中、チェロの首席である山本氏とのコンビネーションを考えたら、山本氏との演奏回数が多い石田氏を客演コンマスにお迎えすることに全く違和感はありません。
また、びわ湖の合唱はほとんどが全くの素人で、今年1月から練習をしていたそうです(その努力に報いるため、中止だけはなんとか避けようとした結果の前倒し開催だったのかもしれませんね)。

 東条先生のブログ内でまた書かせていただき、恐縮ですが、「京響ファン」さんはこの演奏会に来場されたでしょうか。当日配布の冊子にも合唱参加者全員の氏名が掲載され、声楽アンサンブルを含めた70人前後のプロの名が客演としてあります。アマチュアはプロを優に超える人数でしたが、「ほとんど全くの素人」という記載にはならないはずです。前記の繰り返しになりますが、中にはオペラでの数々の経験、他のプロ合唱団の長い在籍、多くの各種コンサートへの出演が豊富な歌手や気鋭の若手声楽家も多く見られ、京響ファンさんの記述内容は誤っています。もちろん、ネーム・バリューだけでなく、合唱の充実は先述の通りです。
 アマチュアの方々も、多くは多分、第九(ベートーヴェン)などの経験がある人が多いでしょうし、長丁場の練習の成果をよく発揮され、相応の経験と芸術理解を深められたのではないでしょうか。(余談ですが、別の、京都で行われた8番の公演では、京大や阪大の学生さんたちの合唱がよく健闘していました。彼らもよくいろいろと研究していたのではないかと思います。)
 一方、コンマスの客演についてですが、普通、こうした大きな企画だと、複数のコンマスが出演することも稀ではありません。京響ファンさんの記事で、京響の現況を知り、HPを見ましたが(上記客演コンマスの名はなし)、どちらかというと特異な状況で、早急にもう1人、正コンサートマスターの加入を期待したいところです。(読響は4人です。)また、客演のお二人は息が合うので違和感はないとのご意見ですが、お二人の息が合う所は私も横浜で随分見てはいますが、この横浜の楽団の主軸のお二人であって、お二人中心の、またはお二人だけの京響ではない訳で、他の何十人との今回の呼吸については、前記の通りに私は感じました。
 音楽鑑賞では肩書きやプロフィールも参考になりますが、誰と誰が一緒だから常に名演だとか、メディアに出たから一流だとか、来歴、学歴のみの先入観や憶測で満足してはいけないし、演奏はその度に異なり、一期一会の演奏内容がどうだったか、あるいはこれを聴衆が客観的にどう捉えるかが重要な訳です。
 僭越で恐縮ですが、東条先生が全国の演奏会やオペラを、興行によっては複数回ご鑑賞になり、我々音楽ファンのために内容、講評をお書き頂いている意義も、こうした点につながる部分が多々あり、拝読することで我々も鑑賞力を高めてゆくことが期待できるのではないか、と私は考えています。
 極端な例で、また論点も少しずれますが、近年、残念ながら、演奏者や演奏団体の肩書きや入場料金に最初から酔いしれて、演奏内容や周囲の迷惑を顧みず、ブラボーを自己満足のまま絶叫したり、周囲の耳障りになることを無視してでも、けたたましい拍手を続ければ演奏者に自分の感動が伝わると錯覚している、子供じみた発想の人々が大変増えています。クラシック音楽の感動とは、こうした先入観を介した安直な思い込み、ましてや他人の迷惑を考えられない無作法をさらけだす行動とは異なる性質のものです。(迷惑に気付かない、客観的に状況を判断できない、という時点で、もう大方は音楽鑑賞にも客観的な観点を持ち合わせていない、つまり、主観的にしか演奏を捉えられないレベルであり、拍手もブラボーもその程度、ということにもなるかと思います。)
 今回の京響ファンさんのご意見は、もちろん、こうした心無いファンとは異なる、京響への実直な愛着からのものと思います。私も京響が好きな1人ではありますが、京響のほっこりとした感じのまとまり具合に良き色合いを感じることもありますが、演奏によっては今回のように時折、更に一歩進めてもう少し弾き込んで欲しい、と思うことも今迄にも、しばしば個人的には感じています。楽団がより前進してほしい期待もこめて、長くなりましたが、私見を述べさせていただいた次第です。

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