2018-12

2018・9・18(火)ジョス・ファン・インマゼール・リサイタル
日本モーツァルト協会第601回例会

   東京文化会館小ホール  6時45分

 東京文化会館のエントランスにに入った途端、小ホールの開場を待つ人々(全自由席)の長蛇の列に肝を潰したが、ホールは収容人員約650だから、座れることは確実。

 それにしてもこの協会のパワーは大したものである。年に10回の月例コンサート(ナマの演奏会である!)を開催しているなどという愛好家協会は、稀であろう。資料によれば創設は1955年、発足時の会長は堀内敬三、副会長は属啓成、会員数は38名。第1回例会は山葉ホール(!)でのレコードコンサート(!)だったそうである。

 で、今日はジョス・ファン・インマゼールによるモーツァルト演奏会。
 曲目は、第1部が「幻想曲ハ短調K475」「グルックの《メッカの巡礼》の主題による変奏曲」「アダージョ ロ短調K540」「ソナタ ハ短調K457」。第2部が「幻想曲ハ短調K396」「ロンド イ短調K511」「メヌエット ニ長調K355」「ソナタ イ長調K331」。
 楽器はヴァルター1800年頃のモデルによる2002年マクナルティ製作のフォルテピアノ。

 とにかく、「アレグロ」が極度に少ないプログラムである。それに、インマゼールの演奏は、たとえば20年前に録音したディスクにおけるそれなどとは、もはや別人のように違う。テンポも遅く、音色も暗く、沈潜の極みに達している。
 いくつかあるアレグロ楽章でも、彼はテンポをかなり抑制して演奏(「K457」の両端楽章にしても同様だ)しているし、しかもすべてにわたり、音量も抑制している。そのためもあって、第1部などでは、聴き手はすさまじい緊張を強いられ、それから解放されることがないままなのだ。

 第2部においても同様だが、しかしインマゼールは、それらを有機的な一つの流れとして構築したいと思っていることがまざまざと感じられるのである━━今日は1曲終るごとに拍手が入り、彼もそれに応えてゆっくりと立ち上がって答礼し、すぐ椅子に座るという動作を繰り返していたが、本来は彼も切れ目なしに演奏したいと思っていたのではなかろうか?

 最後の「K331」の第1楽章で、おそらくは初めて、やや明るい雰囲気が導入されたあとに、アレグレットながらイ長調の闊達な「トルコ行進曲」で気分を一気に解放へ━━と思いきや、まるでそんな期待を嘲笑うかのように、激しい音のぶつかり合いが凄まじい効果を醸し出す恐るべき「ALLA TURCA」となった。これはもう、魔性の世界というか、悪魔の笑いともいうか、皮肉なパロディとでもいうか、ともかく異様な個性を持った「トルコ行進曲」の演奏だ。
 普通なら、ピアノフォルテを弾くピアニストは、ハーモニーを美しく端整にまとめるといった演奏をするところだが、インマゼールはフォルテピアノ独特の音響を生かし、敢えて不協和音を強調し、荒々しい響きをつくり出すのである。もっとも、ここで初めて、昔のあの「怒涛のインマゼール」が鮮やかに蘇っていたとも言えようが━━。この強烈な演奏に、聴衆の拍手が爆発した。

 アンコールは、クレメンティの「ソナタ嬰ヘ短調Op.25-5」の第1楽章だったことを、協会のSさんが教えてくれた。

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