2020-05

2018・9・17(月)「浜松国際ピアノコンクールの覇者たち」 2日目

      アクトシティ浜松 大ホール  2時

 昨日の続き。今日はアレクセイ・ゴルラッチがベートーヴェンの「皇帝」を、イリヤ・ラシュコフスキーがブラームスの「第1番」を、最後にアレクサンダー・ガヴリリュクがラフマニノフの「第2番」を弾いた。

 ゴルラッチの「皇帝」は如何なるものなりやと期待していたのだが、残念ながら何となくノリが悪いというか、面白くない。きちんと弾いてはいるのだが、演奏に何故か生気が感じられないのである。
 山下一史の指揮する東京響も、それに付き合ってか、甚だまとまりを欠いた。昨日同様、どうもみんな立ち上がりがよろしくない。
 ゴルラッチは今30歳だから、未だ伸びしろは充分とは言えるが、スケール感の大小は別として、もっと若いなりの気魄といったものがあってもいいだろう。スコアにはピアノのパートが記されていない全曲の最後の二つの和音に、ゴルラッチが「僕も一緒に」とばかり即興の打撃を加え、指揮者の方を向いてニコッとした振舞いに、若者らしい茶目っ気を見た。

 オーケストラは、「皇帝」での不安定さを引きずったのか、次のブラームスの「1番」の長い提示部の演奏はあまり冴えず、登場したイリヤ・ラシュコフスキーも出だしはやや平凡だったが、彼が次第に調子を上げて行くのに並行して、オーケストラも急激に活気を取り戻す。
 展開部あたりからは、両者とも気魄のぶつかり合いとなった。昨日の「2番」とは違い、こちらはブラームスが若い日の情熱を思い切りぶつけた作品だから、演奏に相応の均衡が取れている限り、荒々しさも長所となる。第1楽章展開部の終りから再現部にかけてあたりのソロ・ピアノとオーケストラ(特にティンパニ)との応酬などにはすこぶる劇的なものがあったし、その後も大きな起伏が繰り返されて、全曲最後は曲想に相応しい豪壮な終結となった。これは快演。

 最後にラフマニノフの「2番」を弾いたアレクサンダー・ガヴリリュクは、まさに真打登場といった雰囲気。34歳とは思えぬ風貌が貫録充分なものを感じさせる所為もあるだろうが、何よりも演奏そのものにあふれる闊達さ、豪快さ、持って行き方の巧みさが見事なのだ。聴かせどころの直前でちょっとした矯めをつくってからパッと入る呼吸の巧さも決まっているし、クレッシェンドやアクセントを細かく設定して音楽に多彩な変化を持たせるあたりも鮮やか。
 これに呼応してオーケストラも轟きわたった。本来よく鳴り過ぎる傾向に出来ているオーケストラ・パートにはもう少し抑えてもらった方が有難かったのだが、ともあれ、これも快演だったといえよう。

 コンクールの本番は、11月である。

 5時前に終演となったので、5時21分の「こだま」で帰京。30年以上前、FM静岡の仕事で週に2,3回往復していた頃に比べ、最近の「こだま」は、「のぞみ」と「ひかり」の後塵を遥かに拝し、えらく時間がかかるようになったのに驚く。「こだま」の50分後に浜松を発った「ひかり」が、品川にはその「こだま」のわずか20分後に着いてしまう、という有様なのだから。

コメント

素晴らしかったです。

ご無沙汰しております。小生も、浜松まで足を延ばし、ガラ・コンサート「覇者たちによるコンチェルトの饗宴」を拝聴いたしました。浜松アクトシティの大ホールは、我が国で最初の四面舞台を有するホールなんですね。駅から近いし、さすが浜松という感じの立派な施設でしたが、コンサートの内容も非常に充実したもので大いに楽しませていただきました。

初日二日目とも、1曲目が今ひとつで後の2曲の方が楽しめたという印象は東条先生のご評価と共通するところです。ただし、小生の場合、初日は往きの新幹線の中で、二日目は開演前にホテルのレストランで、少々アルコールを摂取しておりましたため、そうでなくても鈍い耳がさらに鈍っていた可能性も少なからずあるのですが(笑・・・ゴメンナサイ)。というわけで、2曲目3曲目を中心にコメントさせていただきます。

ガジェブはSHIGERU KAWAIをチョイス。プログラムによるとラフマニノフ3番を演奏するのは初めてとのことですが、この曲に求める聴き手のすべての思いに見事に応えてくれる熱演で、若さで一気に弾き切ったという感じが少しあったものの、実に見事かつ爽快な演奏でした。

その後のバックスの演奏したチャイコフスキーは、より落ち着きがあって、堂々とした構成感を感じさせ、それでいてテクニック面の凄さも十二分に味わせてくれる、極めて完成度の高い名演だったと思います。

二日目、ゴルラッチとラシュコフスキーはYAMAHAをチョイス(残りの3名はいずれもSTEINWAY)。ラシュコフスキーの演奏は1楽章のオケとの丁々発止のやりとりの迫力、3楽章の速めのテンポ設定など、ブラームス1番のヴィルトゥオーゾ的なところをかなり強調するもので、小生はこの曲にはこのようなスタイルも当然ありだと思っているので、とても楽しむことができました(隣で聴いていた家内は、ちょっとやり過ぎ・乱暴と感じたようであまりお気に召さなかったようですが)。

ガヴリリュクの演奏するラフマニノフ2番は、12日の東京芸術劇場「ロシア三大ピアノ協奏曲」で同じ曲を聴いたばかりだったことが少し不利に働いた(感動の度合いを少し低下させた)かもしれませんが、実に安定感のあるものでした(家内はこちらの方を高く評価していました)。

あと、印象的だったのは、SHIGERU KAWAIとYAMAHAの響きの美しさ。何と言っても、地元浜松でのハレの舞台ですから、両社とも最上のコンディションの楽器を持ち込んでいるのでしょう、小生の席は、前から三列目の中央ブロック右側という、ピアニストの手は見えないけど、ピアノの響きはよく聴こえるところだったのですが、そのようなステージ近くで聴く限りにおいて、双方ともSTEINWAYに全く劣らない素晴らしい音色を聴かせてくれました。

とにかく、このようなスタイルのコンサートは否応なく各奏者が対決するような雰囲気になるわけで、全員が真摯に取り組み、文字通り真剣勝負の演奏を聴かせてくれました。10回記念で素晴らしい企画を実現していただいた関係者の皆さまに感謝いたします。

話は変わりますが、マスコミが報道しているとおり、東京芸大関係者で構成されるピアノ三重奏団、葵トリオがミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で見事第1位を受賞しました。この、なかなか第1位を出さないことで有名な難関コンクールで、史上初の日本人トリオによる第1位受賞とは素晴らしい快挙ですね。機会があれば実演に接してみたいと思っております。  


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