2018-10

2018・9・16(日)「浜松国際ピアノコンクールの覇者たち」 初日

      アクトシティ浜松 大ホール  2時

 「第10回浜松国際ピアノコンクール開催記念ガラ・コンサート 覇者たちによるコンチェルトの饗宴」と題された、2日間にわたる協奏曲の演奏会。サポートは、山下一史指揮の東京交響楽団(コンサートマスターはグレブ・ニキティン)。

 出演ピアニストは次の通り。
 第3回(1997年)第1位 アレッシオ・バックス
 第4回(2000年)第1位 アレクサンダー・ガヴリリュク
 第5回(2003年)最高位 アレクサンダー・コブリン
 第6回(2006年)第1位 アレクセイ・ゴルラッチ
 第8回(2012年)第1位 イリヤ・ラシュコフスキー
 第9回(2015年)第1位 アレクサンダー・ガジェヴ

 つまり今回は、「第5回」にコブリンと最高位(1位なしの2位)を分け合ったラファウ・ブレハッチと、「第7回」で優勝したチョ・ソンジンを除き、第3回から第9回までの優勝者たち又は最高位入賞者の中から、計6人が集まったことになる。今日・初日は、コブリン、ガジェヴ、バックスが出演した。

 コンクールでのコンチェルトというと、チャイコフスキーとかラフマニノフとかプロコフィエフとか、所謂名人芸なるものを誇示してガンガン弾きまくるタイプの協奏曲ばかりやられるので、聴いているといつも食傷気味になるものだ。その点、この2日間のプログラムには、ブラームスの二つの協奏曲や、珍しくベートーヴェンの「皇帝」が含まれていたので、多少は安心して聴きに来たというわけだが━━。

 だが今日の1曲目、ブラームスの「2番」を引っ提げて登場したアレクサンダー・コブリンは、それをまるでラフマニノフかチャイコフスキーのコンチェルトでも弾くかのように、奔放なほどダイナミックに、荒々しく、飛び跳ねるように、叩きつけるように弾いたのには呆気にとられた。こんなにガンガン鳴るブラームスの「2番」は聴いたことがない。
 第2楽章など、熱狂的というよりは躁状態と言った方がいいような演奏で、山下と東京響もそれに合わせて大暴れ、ティンパニも怒号するので、言っちゃ何だが、騒々しいことこの上ない。
 いくらこの楽章の指定が「アレグロ・アパッショナート」でも、ブラームスの「情熱的」は、チャイコフスキーの「情熱的」とは、おのずから全く異なる性質のものであるはずだろう。━━とはいえコブリンが「おれが感じるブラームス」として、憚ることなく独自のイメージをブラームスのこの曲から引き出して見せるという行為は、いわば若さの特権でもある。それゆえ、私たちは苦笑しつつ聴くほかはない。

 このコブリンのブラームスがあまりに物凄かったため、次に登場したアレクサンダー・ガジェヴがラフマニノフの「協奏曲第3番」を弾き始めた時には、その端整な、きっちりとした音楽の構築が、いっそう強く印象づけられることになった。いわば楷書体のラフマニノフというか、どこから見ても整った演奏で、これまたすこぶる意外な感に打たれる。
 だがそれは、融通の利かぬ演奏だったという意味ではない。第1楽章での長いソロにおける劇的な起伏や、各所における猛烈な加速と昂揚などの個所における彼の演奏は、渾身のエネルギーにあふれている。ただそんな個所でさえ、音楽の骨格は決して崩れることがなく、常に強固な構築性を失わないということなのである。そして、それがまた実に新鮮なものに聞こえたのだ。
 山下と東京響が、先ほどとは違い、冒頭から端整な演奏を響かせて、このガジェヴの演奏にぴたりと合せていたのには感心した。

 そして最後に、アレッシオ・バックスが登場して、チャイコフスキーの「協奏曲第1番」を弾いた。これまた極めてバランスのいい、あらゆる意味で均衡のとれた演奏だった。推進性も強靭さも充分であり、かつ、引き締まった構築性にも事欠かない。このような、力強いけれども決して無暗矢鱈にバリバリ弾きまくらない演奏なら、この曲にも少なからぬ魅力が見出されるというものである。

 アクトシティ内のホテルオークラ浜松に泊。

コメント

コブリンが?

ロシアで偶然、庄司紗矢香とピアノトリオで聴いたことがある縁で西宮の芸文でリサイタル、コンチェルトら数回聴きに行きました。その印象では端正だがインパクトにかけると思っていました。今回の批評を読ましていただき今後の彼の演奏注目しておきます。

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