2020-04

2018・9・15(土)高関健指揮東京シティ・フィル 「スペインの時」

     東京オペラシティ コンサートホール  2時

 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団が、常任指揮者・高関健とともに、ラヴェルのオペラ「スペインの時」演奏会形式上演に取り組んだ。
 先年の「ファウストの劫罰」などに続く力作上演で、熱演・快演ではあったのだが、惜しむらくは客の入りが・・・・満足できる状態に達していなかったのは気の毒。

 たしかに今日は、同時間帯に上岡敏之と新日本フィル、カンブルランと読響、などという強豪クラスのオケの演奏会が競合していたのは事実である。だがシティ・フィルだって、ただ地道にやっているだけでなく、ふだんのPRの方法を工夫すれば、もう少し何とかなると思うのだが・・・・。

 それは措くとして、今日のラヴェルのオペラ「スペインの時」は、なかなかの聴き応えある演奏だった。
 協演の歌手陣は━━半田美和子(時計屋の美人妻、浮気っぽいコンセプシオン)、村上公太(実直な時計屋の主人トルケマダ)、樋口達哉(コンセプシオンの浮気相手、草食系男子の詩人ゴンザルヴェ)、枡貴志(剛力のロバ曳きラミーロ)、北川辰彦(コンセプシオンに言い寄る好色な銀行家ドン・イニーゴ・ゴメス)。コンサートマスターは戸澤哲夫。

 高関健の指揮は、極めて劇的で、起伏の大きな表現である。描写性に富む個所━━例えば「突進して来る牛の角をポケットの時計が防いだ」と語られる場面などでは、オーケストラを芝居気たっぷりに大音響で咆哮させ、まるで怪獣が目の前で倒れたようなイメージを見事につくり出す。このオペラのオーケストラ・パートが、かくも雄弁な、表現力豊かなものであることは、舞台上演オペラとして観ている時には、とかく聴き逃しがちになるものだが、今回はその音楽の魅力を、余すところなく伝えてくれた指揮だったと言えるだろう。
 シティ・フィルも、すこぶる表情豊かに演奏してくれた。

 歌手陣5人も好演。半田美和子はもともと芝居の上手い人だが(細川俊夫の「斑女」広島初演での花子役の鬼気迫る演技は忘れられない)今日も適度の身振りを交えて、時計屋の女房をチャーミングに歌い演じた。テノールの声質を派手に駆使した樋口達哉の脳天気な詩人役もいい。

 フランス語歌唱の字幕付き。字幕(制作者のクレジット無し)は簡潔で解り易い言葉遣いだったが、視覚を伴わぬ演奏会形式上演の場合は、場面をいっそう解り易くするために、多少言葉を補う必要があるだろう。
 例えばコンセプシオンが時間稼ぎのため、ラミーロに別の時計をも運ばせようとする場面、舞台上演なら「その」と指さして「時計を私の部屋へ」となるからすぐ判るだろうが、視覚がない場合は前後の文章の関係からすると判り難い。せめて「こっちの別の時計もやはり私の部屋へ」くらいにすべきと思われる。
 演奏会形式オペラ上演はこれからも増えるだろうが、字幕構成には「解り易さ」をモットーに、より親切な配慮を望みたいところである。

 なお、休憩前には、モーツァルトの「交響曲第39番」も演奏されていた。これは大編成による豪壮な演奏。

コメント

層の薄さは問題

お疲れ様です。
当団が、上手くなっているのは紛れも無い事実。しかし、当団の顔とも言うべき竹山愛、山口真由を海外研修で欠くのは痛い。穴を埋めるのは大変だろう。最近は、高校生や外人でも、ちゃんと弾ける(吹ける)人が増えて来た。その辺が活路か。

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客入りが悪い悪いと毎回お書きになられるのは、逆効果ではないかと思われます(むしろ印象を悪くしています)。
この日は、いつもの定期演奏会より入っていたし、ご指摘の通り、強豪オーケストラと重なった中で、良く健闘したのではないでしょうか。
選曲の妙だけでなく、HP上で特別サイトを立ち上げたり、SNSを活用するなど、PRの工夫も見られます。
なにより、この団の演奏の良さに対する認知度が上がってきている、と好意的にとらえ、今後も応援して行きたいと存じます。

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