2019-07

2018・8・12(日)許忠指揮蘇州交響楽団

       サントリーホール  6時

 川崎での演奏会は5時少し過ぎに終る。5時24分の東海道線に乗り、新橋駅からタクシーを飛ばしたら、5時50分にはサントリーホールに着いてしまった。おかげで、開演時間には間に合わぬと思っていたこの珍しい演奏会を、最初から聴くことが出来た。

 この蘇州交響楽団は、2016年11月、蘇州に創設されたという若いオーケストラである。今回はアジア・ツアーの一環で、東京と神戸(国際会館)で1回ずつの公演の由。指揮は首席指揮者の許忠。
 プログラムは、陳其鋼の「五行」、サン=サーンスの「ヴァイオリン協奏曲第3番」(ソリストは古沢巌)、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」と「民謡の主題によるスコットランド行進曲」及び交響詩「海」。アンコールはドビュッシーの「夜想曲」からの「祭」と、最後に中国の「瑤族舞曲」(Wikiには、ヤオ族の舞曲を素材に劉鉄山と茅沅が1952年に作曲したものと載っている)が演奏された。終演は8時半。

 これらの演奏の中で、協奏曲を弾いた古沢巌の音が客席にまっすぐ飛んで来ず、しかもオーケストラの直截な力強い響きとは水と油の音色だったこともあり、この曲だけが今日のプログラムの中で最もアンバランスな印象を生んで聴き劣りがしたのは惜しい。
 だが、それ以外は、見事だった。冒頭の「五行」でのフランス印象派の流れを引く美しい音色(作曲者はメシアンの弟子の由)に始まり、サン=サーンスの協奏曲の管弦楽パートの洒落た表情━━特に第2楽章の後半は絶品だ━━を経てドビュッシーのブリリアントな音色に続く蘇州交響楽団の演奏は、非常に水準が━━技術的にも、音楽的にも━━高いものがあった。

 「牧神」では、1番オーボエが隣の1番フルートに比べ不自然に大きな音で吹いたり、「海」ではやや力任せの最強奏が聞かれたり、といった荒っぽい部分がないでもなかったが、これだけ色彩の変化に富んだ演奏は、アジアのオーケストラはなかなか得られないものである、と言ってもいい。
 聞くところによると、中国の豊富な資金力にもの言わせ、各国でオーディションを行ない、優秀な奏者を集めた楽団であるとのこと。メンバー・リストを見ると、80人強の楽員のうち半数近くが、特に金管の大多数が西洋人である。ただしクラリネット副首席には日本人女性の名も見える。

 そういう混成部隊という問題はあるにしても、20年ほど前に、「アジア・オーケストラウィーク」に来日していた頃の中国のオーケストラとは、もはや格段の違いがある団体が出現したことに間違いはない。
 この調子で行くと、中国のオーケストラは向後10年を出でずして、日本のオーケストラを脅かす勢いを示すことになるだろう。ただし、指揮者に人を得れば、ではあるが。

コメント

音楽の世界でもお金の力は絶大なようですね。「十年もすれば中国のオケは日本のオケを凌駕する」というのは興味深くショッキングなご指摘です。そのご指摘でサッカーのことを思い出しました。
 サッカーでも今、中国のクラブは豊富な資金力に物を言わせ欧州、南米等から好選手、名監督を集め、アジアの戦いで日本は苦戦を強いられることが多くなってると聞きます。しかし代表チームはクラブに比例して強くはならず、W杯には2002年日韓大会以来出場できずにいます。
 音楽、オーケストラにはサッカーの代表チームに当たる物が無いと思いますので同じには語れませんが、中国のオケが資金力を背景に日本を脅かすというのは、サッカーとよく似てショッキングです。

 

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