2018-11

2018・7・16(月)アラン・ギルバート指揮東京都交響楽団

     サントリーホール  2時

 アラン・ギルバートの首席客演指揮者就任披露公演、シューベルトの「交響曲第2番」と、マーラーの「交響曲第1番《巨人》」。

 アランは、都響とは2011年7月(☞17日の項)のブラームスの「第1交響曲」における快演以来、相性のすこぶる良い関係にある人だ。従って今日も、それを知る聴衆から温かく迎えられ、限りない拍手をも浴びていた。演奏も、極めて張りと活気にあふれる充実したもので、新ポストでの滑り出しも上々と思われる。

 「巨人」は、プログラム冊子のタイトル頁に、「今回の演奏楽譜は当初ユニバーサル社ウェブサイトを参照し『1893年ハンブルク稿/花の章付き』と発表しましたが、スコアの表記に従って『クービク新校訂全集版/2014年』と呼称します」とクレジットされている。
 やっぱりそうだろうな、という感だったのは、以前、ヘンゲルブロックが北ドイツ放送響と日本でこれを演奏した時(☞2015年6月4日)にも、「これはハンブルク稿とはいっても、第2ハンブルク稿のようなものじゃないのか」という話が広まっていたからだ。そう、思い出したがこの版は、山田和樹も日本フィルとのマーラー・ツィクルス第1回(☞2015年1月24日)で演奏したことがあった。

 幸い今回は、それについての寺西基之さんの詳細で解り易い解説がついているので助かる。要するに、同じ「━━稿」とひとくちに言っても、当該演奏会直後における作曲者本人による手直しなどがいろいろあるから、甚だややこしくなるのだ。

 で、この演奏、耳に馴染んだ所謂「現行版」と比べながら聴くと、その違いがとてつもなく面白い。管弦楽の扱いも、整理された現行版よりも、もっと濃厚で、野性的で荒々しく、時には雑然としていて、マーラーの最初のアイディアはこうだったのか、と興味が尽きない。以前どこかで聴いた「第1ハンブルク稿」と比べても、なるほどここはこのように手直ししたのか、と感心させられる。

 アラン・ギルバートの指揮は、やや速めのテンポで、しかも昂揚個所ではアッチェルランドを多用して煽りまくるから、テンポやエスプレッシーヴォに関しては、スコアに指定されているのか、それとも彼の解釈なのか、当該スコアを未だ入手していない私には判然としかねるけれども、少なくともオーケストレーションの差異に関しては、「ダイヤの原石」的な味を堪能することができる。

 矢部達哉をリーダーとする都響も熱演を聴かせてくれた。金管のソロの一部には不安定な個所があったものの、木管群は冴えて鋭いソロを聴かせ、第1楽章序奏における舞台裏でのトランペット群とホルン群(!)は爽快な音色のファンファーレを響かせた。「第4楽章」冒頭のコントラバスのソロ━━この稿では、チェロではない━━も巧い。若きマーラーの気負いと情熱とを見事に再現させた演奏と言っていいだろう。

 ただし、当然ながら、アンサンブル構築の完成度としては、第1部におけるシューベルトの「第2交響曲」の方が、ずっと上だったろう。
 そこでは、強固に引き締められた構築のうちに、分厚く剛直な、時には少し物々しいほどの力を漲らせたシリアスなシューベルトが、ダイナミックに進んで行く。アラン・ギルバートは、マーラーの遠い先駆という位置づけでシューベルトを捉えていたのかもしれない。
 それと同時に、アランのこの厚い豪壮な音づくりは、いかにも8シーズンにわたりニューヨーク・フィルの音楽監督として君臨した指揮者の志向を窺わせるものでもあった。

コメント

こんにちは。(最近はほぼ毎回なのですが)今回も東条先生のお姿を見かけ、レビューを楽しみにしていました。

ギルバートの指揮は明快で、都響もそれにこたえて相性のよさを感じました。音の膨らませかたがうまくて音色にツヤがあり、強弱の対比もうまい。演奏水準が高いと思いました。

都響もギルバートも初めてでしたが、(私の月2~3回の演奏会通いの中で)少し久しぶりに、満足度の高い演奏でした。会場の熱狂的な拍手もこれなら納得です。

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