2018-06

2018・5・26(土)飯森範親指揮東京交響楽団 「白いバラ」日本初演

      サントリーホール  6時

 ハンス・ヴェルナー=ヘンツェ(1926~2012)の「交響的侵略~マラトンの墓の上で」と、ウド・ツィンマーマンの歌劇「白いバラ」(日本初演)とを組み合わせた意欲的なプログラム。
 正指揮者・飯森範親が入魂の指揮。後者での協演は角田祐子(S)とクリスティアン・ミードル(Br)。東京響は「フィデリオ」の間を縫っての定期での力演である。コンサートマスターは水谷晃。

 ヘンツェの「交響的侵略 Scorribanda Sinfonica」は、打楽器群が大活躍するダイナミックな、リズミカルな、15分ほどの作品である。
 プログラム冊子掲載の沼野雄司さんの解説によれば、原曲は1957年の演劇「ダンスのマラソン」のためのもので、これを2001年に改作したものである由(同冊子の曲目一覧表には「2004年改訂版」とある)。
 ヘンツェにしては随分賑やかで親しみやすい曲だが、次の「白いバラ Weisse Rose」の暗い衝撃的な内容に先立つプログラムとしても、これは適切な選曲だったと思う。

 「白いバラ」は、飯森さんのプレトークによれば「一部カット」を施しているとのことだったが、ほぼ1時間に及んだ今回の演奏会形式上演は、彼と東京響の鋭く切り裂くような演奏と、2人の声楽ソリストたちの好演とによって、充分すぎるほど強烈な印象を残してくれた。素材だけでなく、音楽そのものに雄弁な力が備わっているがゆえの印象だ。

 「白いバラ」とは、第2次大戦中のナチスの圧政下におけるドイツの学生たちの反戦運動の由で、このオペラはその運動の中で逮捕処刑されたハンスとゾフィーの兄妹を主人公とし、彼らの対話やモノローグにオーケストラが絡む形で進められる。
 内容からして、ドイツでは今なお現実味を帯びた身につまされるドラマとして衝撃的に受け取られるだろうが、日本での受容の仕方は、それとはちょっと異なるものがあるかもしれない。

 それはともかくとしても、例えば全曲の大詰の個所━━第16曲「もう黙っていてはだめだ」などは、聴いていても慄然とするほどで、ヘンデルの「私を泣かせて下さい」が暗く引用(これがまた不気味だ)されたのち、暴力的な行進曲が威圧的にクレッシェンドを重ねて行き、それがフッと途切れると、兄妹の短い言葉が重苦しい静寂の中に響き━━ゾフィーの「私たちは絞首刑にされるの? それともギロチンで?」の言葉とともに突然終結するという、物凄い形が採られる。その台詞の直後に舞台を一瞬にして暗転させるという今回の演出も効果的だったであろう。

 今月の東京のオーケストラ界には、大作の「日本初演」がいくつか連続した。意欲的な姿勢を讃えたい。

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