2019-12

2018・5・22(火)下野竜也指揮東京都交響楽団

    サントリーホール  7時

 Bシリーズの定期で、前半にメンデルスゾーンの「交響曲第3番《スコットランド》」が演奏され、後半ではジョン・コリリアーノ(1938~)の「ミスター・タンブリンマン~ボブ・ディランの7つの詩」(ソプラノ・ソロはヒラ・プリットマン)という珍しい作品が日本初演された。コンサートマスターは矢部達哉。いかにも下野らしいプログラムである。

 「スコットランド」はかなり分厚い音で、ものものしいほど大がかりな演奏であり、終楽章のコーダなど、ここぞとばかりに盛り上げたスペクタクルなものであった。それはもちろん好演ではあったが━━しかし、今夜のハイライトはやはり次のコリリアーノの作品だったであろう。

 この作品で興味深かったものの一つは、ボブ・ディランの詩を題材にしていること。
 使用された詩は、「ミスター・タンブリンマン」「物干し」「風に吹かれて」「戦争の親玉」「見張塔からずっと」「自由の鐘」「いつまでも若く」(以上プログラム冊子掲載の曲目一覧による表記)の七つ。
 詩はほぼ原作通りと思われるが、音楽の方は、フォークの原曲からは想像もできないような「クラシックの現代音楽」的な手法のものに移されていて、歌のパートはシュプレヒ・ゲザングに近いスタイルで進められる。

 コリリアーノは「ディランの曲を全く聴いたことがなかった」そうで(同前の作曲者自身の解説による)、それがかえって良かったのであろう。また彼は「ポップスやロックを書くことに挑戦するつもりはない」とも述べている(同前)が、それもまた賢明なことだったと思う。
 ともあれここでは、コリリアーノの感性が独自に受け止めたボブ・ディランの詩が、コリリアーノなりの音楽で、激烈に、しかも美しく表出されているのである。

 全曲は、第4曲「戦争の親玉」でのオーケストラの激怒のような咆哮・絶叫が凄まじく、これを全曲のピークとして、終曲(第7曲、後奏曲)の「Forever Young」の安らかな終結に向かって行くという構成が採られる。
 特にこの終曲の美しさは、息を呑ませるほどのものであった。そこでのヴォーカルは大部分がア・カペラだが、時にオーケストラも夢幻的な響きで加わり、それはあのバーンスタインの「ウェストサイド・ストーリー」の終曲の「Somewhere」を連想させる安息の祈りのような音楽になる。

 全曲が終ったあと、下野と都響に向けられた拍手も盛大だったが、ヒラ・プリットマンに贈られた拍手と歓声は更に大きく、いつまでも続き、ついにソロ・カーテンコールまで行われるほどだった。彼女のヴォーカルは、作曲者の指定通り(同前)PAを使用してのもので、音質はあまり良いとは言えなかったものの、それにもかかわらず聴衆の歓呼を浴びたのは、ひとえに彼女の表現力の豊かさゆえだったであろう。

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