2018-05

2018・5・12(土)ロッシーニ:「チェネレントラ」

   フェスティバルホール  2時

 大阪国際フェスティバル公演。主催は朝日新聞文化財団、朝日新聞、大阪国際フェスティバル協会、フェスティバルホール、日本オペラ振興会、日本センチュリー交響楽団。

 フランチェスコ・ベッロット演出と園田隆一郎指揮によるこのプロダクションは、既に4月末、藤原歌劇団の公演として昭和音大のテアトロ・ジーリオ・ショウワで上演されている。それを今回、わざわざ大阪での上演を観に行ったのは、最近イタリアで大活躍の話題のメゾ・ソプラノ脇園彩が、大阪公演のみ、この題名役を歌うからである。

 だが、お目当てのその脇園彩が、この数日間、体調を崩しているとかで、今日は絶好調ではなかったのが残念至極。
 歌手の場合には、こういうことは誰でも起こり得ることなので、仕方がない。また別の機会に、あの素晴らしい歌唱を聴かせてもらえればと思うしかない。
 今日は、彼女はかなり声をセーヴして、それゆえ輝かしさや力感などはなかったものの、一応は破綻なく歌っていた。しかしその本調子ではなかった歌唱の中にさえも、明るく温かい声、安定した歌い方、声のふくらみなどをはじめ、プリマとしての特徴や雰囲気をはっきりと感じさせていたのは、やはり彼女が卓越した歌手であることを充分にうかがわせるものといえるだろう。

 プリマが本調子でなかった分、共演の歌手たちが、好演した。
 クロリンダ役の光岡暁恵は、もともと主役の張れるソプラノだが、第2幕終り近くのアリアで気を吐き、灰かぶり娘チェネレントラ何するものぞと気負う意地悪姉妹の姉の「意地」を見事に歌い上げていた。
 また王子ドン・ラミーロ役の小堀勇介は、第2幕のアリアでブリリアントな最高音を颯爽と披露して大拍手を浴びた。意地悪オヤジの男爵ドン・マニフィコ役の谷友博もいつもながらの味のある歌唱を聴かせていた。
 その他、従者ダンディーニの押川浩士、意地悪姉妹の妹の方のティズベの米谷明子、王子の家庭教師アリドーロの伊藤貴之が、手堅い歌唱。

 園田隆一郎は、日本センチュリー響を指揮して、ロッシーニへの共感に満たされた演奏をつくり出していた。この人のイタリア・オペラは、実にいい。
 ただ今日は、脇園彩の声の調子をカバーするためか、音楽全体を抑制していたのだろうか? 特に第1幕では演奏に沸き立つような躍動が感じられず、ロッシーニのオペラとは思えないような静かな雰囲気になってしまっていた。
 もっともこれは、このフェスティバルホールの空間がこのオペラの規模にはあまりにも広大すぎ、演奏全体のつかみどころを失わせかねない状況だったことにも、一因があろう。

 フォルテピアノは園田自身が受け持っており、演出のイメージに関連させて、ディズニー映画{シンデレラ}からの「ビビディ・バビディ・ブ」の一節を引用したりする手法は気が利いていた。一瞬ながら「命短し恋せよ乙女」のようなフシも聞こえたのは、こちらの空耳だったか?

 演出は、「ペローの童話を読み終えた想像力豊かな若者が弟たちにその物語を紹介するような」というベッロットのイメージに基づき、舞台(アンジェロ・サーラの舞台美術)には「ピノキオ」や「ピーター・パン」など書物を模った大きなセットが多数置かれ、その中の「チェネレントラ」という背表紙のある本から主要人物が現れて来るという設定。
 ラストシーンでは王子やチェネレントラが本の中に愉しく戻って行くのとは対照的に、最後まで彼女への嫉妬を露骨に見せていた意地悪な父娘3人が外に取り残され、がっくりして立ちすくむという光景で終結するのは面白いシャレだ。和解の手を差しのべる相手に怨念で応えるような者にはバチがあたる、ということか。

 演技は━━顔の表情は比較的細かかったが━━身振りを含めた演技全体はごく類型的なもので、いわゆる演劇的な要素は期待できない類のもの。登場人物たちが時に所在無げに立ち尽くす(そう見えた)ところもあったりして、舞台に生き生きした表情が今一つ不足気味だった原因は、このあたりにもあったのではないかと思われる。

 5時過ぎ終演。伊丹空港から7時50分のANAで宮崎に飛ぶ。
     →(別稿)モーストリークラシック8月号 公演Reviews

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