2018-07

2018・5・8(火)チョン・ミョンフン指揮東京フィル 「フィデリオ」

      サントリーホール  7時

 チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)の指揮する5月定期、3回公演の2日目。
 出演は、マヌエラ・ウール(レオノーレ)、ペーター・ザイフェルト(フロレスタン)、ルカ・ピサローニ(ドン・ピツァロ)、フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ(ロッコ)、シルヴィア・シュヴァルツ(マルツェリーネ)、大槻孝志(ヤキーノ)、ドン・フェルナンド(小森輝彦)。東京オペラ・シンガーズ。コンサートマスターは近藤薫。

 序曲は、所謂「フィデリオ」序曲でなく、「レオノーレ」序曲第3番が演奏された。チョン・ミョンフンがコメント(プログラム冊子に掲載)しているように、4つの序曲の中でこの「第3番」こそがオペラの内容を最も適切にすべて物語っているゆえに━━という意図は充分納得が行く。
 彼はこの序曲の序奏を極度に遅いテンポで重々しく演奏したが、それは彼がその個所を第2幕冒頭(地下牢の場)導入の音楽と明確に関連づけていることを感じさせる。
 これと対照的に、終曲は極度に速いテンポで演奏されていた。苦悩と歓喜との対比が激しいコントラストで描かれているというわけだ。

 また、チョンがこれまで演奏会形式で指揮したオペラは、いずれもすべて速いテンポで一気呵成に演奏されていた(「トリスタン」などはその最たる例だった)が、この「フィデリオ」を聴くと、彼もさすがにその呼吸を巧みに使い分けていることが解る。
 ただ今日は、彼は東京フィルをかなりダイナミックに響かせており、歌手の声はしばしば打ち消されていた。今回は3回の上演がその都度異なるホールで行われていたため、もしかしたらそのバランス調整が万全でなかったのかもしれないが。

 歌手陣にはいい顔ぶれがそろっていたが、たった一人、スターのペーター・ザイフェルトだけがえらく自由な歌い方をして、チョンのリズムと合わず、また他の歌手とのバランスを欠いていたことだけが気になった。彼はもともと、あんな崩れた歌い方をする人ではなかったはずなのだが━━。
 なおセリフは、メロドラマの一部と素の部分の一部を除き、すべてカットされていた。

 演奏前に、現代演劇の女形で知られる俳優がストーリーを紹介する試みがあった。その試み自体は大変結構だが、彼のナヨナヨとした口調は、ベートーヴェンの音楽やドラマの性格とはおよそ不釣り合いなものだ。わざわざ「《レオノーレ》序曲第3番」を冒頭序曲に置くほど徹底したコンセプトを持った「フィデリオ」の上演なのに、ナレーションのスタイルには注意を払わなかったのか? 
 だれか苛々したらしい客が途中で「早く演奏しろ」とかなんとか怒鳴っていたが、その俳優を罵るのは酷だし、意味がない。責任は、そういうナレーターを起用したプロデューサー的な立場の人にあるだろう。

コメント

あの暴言で会場が凍りつきました。
暴言の主は退去させられるべきで擁護するつもりは全くないが、
イレギュラーな試みをするなら先に説明するのが筋だと思う。

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プレトークは開演時間の前にやる、別の場所でやるなど、聞きたくない人に配慮する選択肢はあったはずです。人選も「芸能人で集客につなげようという」発想だとしたら、少し安易だったのでは?
それでも怒鳴り声をあげるのはやり過ぎでした。

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