2017-11

9・21(日)飯守泰次郎指揮東京シティ・フィル
「トリスタンとイゾルデ」

  ティアラこうとう大ホール

 総力を挙げての演奏は、こちら飯守泰次郎とシティ・フィルも同様。
 「オーケストラル・オペラ」と題するセミ・ステージ形式上演のワーグナー・シリーズも第7回となり、ついに待望の「トリスタンとイゾルデ」が取り上げられた。ワーグナーの舞台作品の中でも、いわば抒情詩的な色合いをもつ「トリスタン」こそは、飯守が最もその本領を発揮できる曲である。

 演奏の仕上がりは、まさに予想通り。こんにち、これだけ情感を重視したアプローチでワーグナーを聴かせることのできる指揮者は、世界にもそう多くいるとは思えない。決して無機的にならない飯守の指揮こそ、「トリスタン」には最もふさわしい。そしてシティ・フィルも、彼の感情豊かな指揮を実によく具現化して見事だった。

 非常な緊張感をもって開始された前奏曲に続き、第1幕は驚くほどヴォルテージの高い演奏になった。とりわけ、船がコーンウォールの港に入る個所から幕切れにいたるあたりの音楽の盛り上がりの凄まじさには、息を呑まされたほどである。
 第2幕に入ってからは、演奏はやや落ち着いたというか、おとなしくなったというか、――まあ要するにいつものシティ・フィルに戻ったということになろうが、――しかし、愛の二重唱の中間部分や、大詰め近くトリスタンとイゾルデが常闇の夜の国について言葉を交わすあたりの、この世ならざる暗い響きの個所などでの深い情感は、やはり印象的であった。
 そして、第3幕の「愛の死」では、オーケストラをいたずらに絶叫させずに、温かみをもって陶酔的な響きに導いていく飯守の感性がすばらしい。私見では、彼とシティ・フィルのこれまでのワーグナー・シリーズの中で、ことオーケストラに関する限り、今回は最高の出来であったと思う。

 歌手陣は、成田勝美(トリスタン)、緑川まり(イゾルデ)、小鉄和広(マルケ王)、福原寿美枝(ブランゲーネ)、島村武男(クルヴェナル)他。
 セミ・ステージ形式とあって多少の演出はつけられていたが、これまでのシリーズ同様、この程度の演出なら無くても一向に困らない。その方が制作費が節約できていいのではなかろうか。
 
 連日、重量感たっぷりな作品と演奏の連続で圧倒され気味だが、明日はハノイへ行って、音楽監督の本名徹次が指揮するベトナム国立交響楽団のマーラーの「交響曲第3番」を聴いてみようと思う。一度本拠地で聴いてみたいと思っていたオーケストラである。

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