2019-10

2018・3・25(日)東京・春・音楽祭 ロッシーニ・マラソン

     東京文化会館小ホール  午前11時、午後1時、3時、5時

 生誕150年記念のロッシーニを中心に据えた、5部からなるマラソン・コンサート。その中から、第1部「悲喜こもごものロッシーニ劇場」、第2部「辣腕興行師バルバイヤとの出会い」、第3部「ロッシーニ・フィーバーの諸相」、第4部「英雄ウィリアム・テルの変容」を聴く。

 これはロッシーニの作品ばかりをやる演奏会ではなく、彼と同時代の作曲家の作品群をも併せて、ロッシーニの立ち位置、歴史的背景、革命と動乱の時代との関わりなどを、小宮正安氏の企画構成と解説により、生演奏で解明して行くという興味深いシリーズである。選曲もよく考え抜かれていて、企画としては非常に秀逸なものであったと思う。

 私は特に、同一の戯曲を素材にした、ロッシーニと他の作曲家のオペラとの比較に興味があったので、たとえば第1部での、「セビリャの理髪師」の「フィガロの登場のアリア」を、それぞれロッシーニとパイジェッロが作曲したもので比較するというのも面白かった。
 とりわけ第4部で特集された、「3人の作曲家によるそれぞれのウィリアム・テルの音楽」を聴き比べるという企画に至っては、私の最も関心を寄せるところである。ここでは、グレトリ(1741~1813)の「ギョーム・テル」、ベルンハルト・アンゼルム・ウェーバー(1764~1821)の「ヴィルヘルム・テル」、ロッシーニの「ギョーム・テル」から数曲ずつが演奏され、最後にそのロッシーニの序曲がリストのピアノ編曲版で全曲演奏されるという内容だった。

 その他のさまざまな選曲も楽しませていただいた。大いに有益な演奏会であった。
 が、惜しむらくは━━演奏の水準に問題がある。
 歌手の中には、この小ホールで、高音を咽喉も裂けよと絶叫してみせる人もいたり、また弦楽器奏者の中には、ヴィルトゥオーゾ的な小品を正確に弾けない人もいたり、あるいは合唱も素人のレベルを感じさせたり、という具合に、せっかくの好企画に水を差すケースも少なくなかったのである。
 だがさしあたりここでは、おおぜいの出演者の中から、ロッシーニやグレトリの序曲を弾いたピアノの岡田将、アリアのサポートで安定した演奏を聴かせてくれたピアノの朴令鈴、「タンクレディ」からのアリアを力強く聴かせてくれたメゾ・ソプラノの富岡明子の3人に賛辞を捧げておきたい。

 この第4部は、当初の予定では5~6時の公演ということになっていた。従って、終ってすぐ飛び出せば、池袋の「あうるすぽっと」で6時半から始まる日本ワーグナー協会例会の「ぺトラ・ラング講演会」に15分ほどの遅刻で間に合うだろうと踏んでいたのだが、第3部でルドルフ大公作曲の長大な「ロッシーニ変奏曲」を吹いたクラリネットのコハーン・イシュトヴァーンが、「抜粋演奏」という打合せにもかかわらず、何故か全曲を延々と演奏してしまったので━━多分打合せが徹底していなかったのだろうと推察するが━━終了が20分押してしまい、そのため第4部の開始が5時半頃、終演が6時半になってしまったのだ。
 私としてはこの第4部はどうしても全部聴きたかったので、━━結局ぺトラ・ラング女史の講演は諦めざるを得なかった、というわけである(無理して行った人もいたようだが)。

 それにしても、「ワーグナーを聴きに行こうとしたら、ロッシーニに妨げられた」というのは、何か時代を超えた因縁話というか、ワーグナーにさんざん悪口を言われたロッシーニが、今ここで逆襲したかのようで・・・・。

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