2019-06

2018・3・13(火)ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮NYフィル

      サントリーホール  7時

 ニューヨーク・フィルハーモニックが演奏するストラヴィンスキーの「春の祭典」を聴くのは、思えば57年ぶり(!)のこと。1961年5月、気鋭の「若手」指揮者レナード・バーンスタインとの初来日の時だった。
 あれは東京文化会館の杮落し演奏会の一環だったが、当時の日本では彼の名は未だ広く知られていなかった(映画「ウェストサイド・ストーリー」が日本で公開されたのはその年の暮になってからだ)ため、客はガラガラ。半分くらいしか入っていなかった、そんな時代だった。

 今回は、満席の聴衆の中で、ヤープ・ヴァン・ズヴェーデンが指揮した。今秋からこのオケの音楽監督に就任することになっているオランダ出身、58歳の指揮者である。
 演奏したのは、ブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」(ソリストはユジャ・ワン)と、その「春の祭典」と、アンコールにワーグナーの「ワルキューレの騎行」━━というプログラム。

 ヴァン(ファン)・ズヴェーデンの個性はたしかにオケにも既に反映されていて、ニューヨークのオケというより、ヨーロッパのローカル・オケのような色合いを感じさせていたが━━演奏の呼吸が真に合うようになるのは、未だこれからだろう。
 特に「春の祭典」では、ヴァン・ズヴェーデンは、突然急激なアッチェルランドをかけたり、また妙に慌しく前のめり的に次の主題やフレーズへ突っ込んで行ったりすることがあり、そういう際にはオーケストラのアンサンブルが乱れることが多い。合わなくなるのを構わず、猛烈なテンポで突き進むことも多い。

 アンサンブルの「合う・合わない」などという問題は、音楽が昂揚さえしていれば、必ずしも重要なものではないというのが私の考えだが、それにしても今日の演奏は、ニューヨーク・フィルにしては随分ガタガタしていて、あまり練習していなかったんじゃないかとも思わせた。
 その一方で、演奏の密度という点においても、さほど濃さを感じさせなかったのである。ブラームスの協奏曲では、その緊張感の低さが特に目立ったのではないか。ソリストのユジャ・ワンとの交流もあまり密なるものを感じさせず、指揮者はソリストに構わずどんどん進んで行くという趣で、全曲最後の個所など、まさにそんな雰囲気であった。
 「ワルキューレの騎行」の方は、猛烈に威勢よく、威圧的に鳴り響いた。

 ニューヨーク・フィルは、ズービン・メータ以降、音楽監督の選定においては意外な方向を打ち出す傾向がある。このヴァン・ズヴェーデンも、今後どのような関係をこのオケと築いて行くのか、注視したいところである。

 そういうわけで、あのユジャ・ワンも、今日はいつもと全く雰囲気が違った。演奏が何か暗く、几帳面で共感に乏しいように聞こえたのは、彼女とブラームスとの相性のためか、それとも今日の指揮者とオケとの相性のためなのか? いずれにせよ、この曲が今日は不思議に無表情な曲に感じられたのである。
 それゆえ、彼女がアンコールで弾いたシューベルト~リスト編の「糸を紡ぐグレートヒェン」とメンデルスゾーンの「失われた幻影」の方がずっと彼女らしく、澄んだ表情で瑞々しく、気持のいい演奏だった━━但し2曲やるのは多すぎるだろう。
 彼女が2曲目を弾き終って、拍手のうちに「快速答礼」をした途端に、コンサートマスターや他の楽員たちが、もう充分、とばかりサッと立ち上がって引き上げはじめたのも、少々露骨で、あまり感じのいいものではなかった。どっちもどっち、というところか。

コメント

50になろうとする人間にとってレナード・バーンスタインは小学生のころの人。ズビン・メータは小学生から大学生の頃の人。NHK-FMで聴いたズビン・メータの演奏会のアンコールが”ワルキューレの紀行”だったことだけ覚えています。
クルト・マズアの時代はコンサートに行ったことがありませんでした。
ロリン・マゼールとニューヨークフィルの組み合わせは、NHK音楽祭で初めて生演奏を聴きました。この演奏旅行の時は、初めて北朝鮮にも足を運んだんでしたっけ。話題になったんですよね。今、ティラーソン国務長官が解任されてどうなるかわからないアメリカと北朝鮮。ロリン・マゼールって、アメリカ人だったからもっと文化親善交流だから大きな役割果たしたんですよね。
アラン・ギルバートはもう少し長く居てほしかった。NDRエルプフィルハーモニーに行ってしまったから残念です。けど東京都交響楽団にはしばらく来演するからうれしいです。NHK交響楽団によく登場していましたね。
ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン。オランダは移民受け入れに寛容な国だから、もしかしたらとても寛容な国民性を持つ人材かもしれませんね。今回だけ特別に同じオランダ人のベルナルド・ハイティンクと一緒に来てほしかった。お客さんもっといっぱい入っただろうに。

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