2019-06

2018・3・11(日)宮本亜門演出 モーツァルト:「魔笛」

     よこすか芸術劇場  2時

 リンツ州立劇場と東京二期会の共同制作で、2013年にリンツでプレミエされ、2015年7月(19日の項)に東京でも上演されたプロダクションの再演。

 仕事の行き詰まりが原因で自棄的になり、一家の崩壊を招いた男が、「魔笛」という「誰でも英雄になれるドラマ」のゲームを体験することにより自信を取り戻し、健全な家庭を取り戻す━━という設定の、宮本亜門のあの演出である。プロジェクション・マッピングを活用した舞台として、当時話題になったものだ。
 今回の上演は、「神奈川県民ホール巡回事業」の一環で、「神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2018 出張公演」となっている。ホールが改修中なので、ここ横須賀の劇場が使われた由。今月18日には相模女子大グリーンホールでも上演されるとのこと。

 今回の出演は、鈴木准(タミーノ)、幸田浩子(パミーナ)、萩原潤(パパゲーノ)、大塚博章(ザラストロ)、鹿野由之(弁者)、安田麻佑子(夜の女王)、高橋淳(モノスタトス)、九嶋香奈枝(パパゲーナ)、その他の皆さん。二期会合唱団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、指揮が川瀬賢太郎。

 まず第一に、川瀬賢太郎の指揮がいい。神奈川フィルを引き締まった音で響かせ、歯切れよくたたみ込み、盛り上げる。全体にすっきりとした自然な端整さを湛えているが、テンポやデュナミークにも極めて細かい神経を行き届かせているといった指揮だ。
 ごく一例だが、序曲の途中と第2幕の最初で繰り返される有名な和音で、最初の16分音符に続く二つ目の2分音符と三つ目の2分音符を、巧く有機的な関連を持たせて響かせている━━喩えれば、三つ目の2分音符が、二つ目の2分音符に対するエコーのような色合いで響く━━ことにはなるほどと思い、不思議な快さを味わった次第なのである。この人の指揮するモーツァルトを、もっと聴いてみたい気がする。
 神奈川フィルも、透明な爽快さで鳴りわたっていたし、最近のこのコンビの快調さを示しているようであった。

 歌手陣。
 鈴木、幸田、高橋ら、前回に引き続いて出演している人たちは、演技も歌唱もさすがに慣れたもの。安田も夜の女王役を、やや力づくといった感ではあったものの、良く歌っていた。パパゲーノの萩原潤は、軽快な味を出していたが、他の主役たちとのコントラストという意味で、もう少し「濃い」表現があれば、と思う━━つまり鈴木と幸田が所謂すっきり型の個性なので、前回の黒田博のようにパパゲーノが狂言回し的な強い存在感を出さないと、この舞台全体が軽くなってしまうのである。萩原さんが悪いという意味では全くないが、個性のバランスの点で、他の共演の人たちも含め、今回のキャスティングには、もう一工夫あってもよかったような気がする。

 演出はもちろん前回の上演と同じはずだが、━━しかし、「魔笛」のドラマの本編と、序曲の中で繰り広げられる夫(本編ではタミーノ)の横暴、妻(本編ではパミーナ)の家出などの寸劇、及びラストシーンにおける一家の大団円の光景などとの関連性が、前回はもっと明確に感じられた記憶があるのだが、こちらの錯覚か? プロジェクション・マッピングの映像も、前回はもう少し絢爛としていたように思うのだが・・・・。
 5時少し過ぎ終演。
     別稿 音楽の友5月号 グラビア

コメント

”魔笛”で思いついた。。昔も今も。

>>今月18日には相模女子大グリーンホールでも上演されるとのこと。

舞台については何も書かないのですが、、

あそこも<旧称グリーンホール相模大野>立派な舞台機構のようですね。
バブル全盛期でもあり東西ドイツの境目が無くなったころのベルリン国立歌劇場来日公演の”魔笛”。1公演をこのホールでやったんですよね。指揮者オットマール・スイトナーが指揮活動自体中止したころです。

複合文化施設を造る典型的な時代。図書館・行政施設・伊勢丹デパート(今は閉鎖店舗の筆頭格)。

自分の住んでいる県も 3面半の舞台機構ですよ。日本海側では大きい設備です。新国立劇場のオペラの引っ越し公演もありました。 マノンレスコー、魔笛、椿姫もあったようです。マリインスキー劇場の”カルメン”も。

複合文化施設。作ればいいという時代は、もう止めにしましょうよ。
民間の複合文化施設の最たる例は、東急文化村。あそこも、バイロイト音楽祭引っ越し公演の”タンホイザー”。大野和士指揮での”魔法の笛”(魔笛)”。
直近の行政の複合文化施設は、(間違いがあるかもしれないけど)しb渋谷区立大和田小学校跡地に名称を公募で募った 渋谷区文化総合センター大和田 かも。(あそこは確か730人程度入るコンサートホールだけど)。

稼働率は??    もうやめましょうよ。新しいもの作る箱物は。。既存の施設でもっと価値ある使い方しましょうよ。

************

魔笛  ??

大野和士氏って、ご執心のようですね。自分の芸術監督の居場所。他人に振らせるのは大正解だけど。ここでも”魔笛”ですか。 

旧称グリーンホール相模大野。での ”魔笛”。成功を祈っています。(私の父親の生まれた実家から歩いて3分。学生時代を過ごした相模大野。)小田急線の複々線化工事完成で便利になっていくから小田急線沿いの人に愛されてほしい劇場ですね。

私の県のホールは、打つ手がないと思います。コンサートホールの音響というよりオペラハウスでの音響にしか聴こえてこないです。新国立劇場の建設に深く関与していた人が、私の住む県のT市が運営する財団のホールにも携わったのですから。

”魔笛”。将来を嘱望される歌手の出発点になる作品ですね。日本に住んでしまったテノール歌手(1980年代後半から1990年代に活躍)ウヴェ・ハイルマンどうしているだろう。。

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