2018-12

2018・2・27(火)マルク・ミンコフスキのメンデルスゾーン

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルを率いての今回の日本公演は、東京と金沢での各1回のみ。ホールは文字通り満席となった。
 プログラムは、メンデルスゾーン特集で、「フィンガルの洞窟」、「交響曲第4番《イタリア》」、「交響曲第3番《スコットランド》」。

 メンデルスゾーンの作品は、作曲者自身による改訂が数多いところへ、特に最近は研究が進んで、ますますややこしくなっているようである。先年発売されたリッカルド・シャイー指揮ゲヴァントハウス管の「フィンガルの洞窟」や「スコットランド」の早期稿による演奏でも、今日一般に演奏される版とのあまりの違いに唖然とさせられたほどだ。この曲、最初はこんなふうになっていたのか!と。
 そんな旧いものを引っ張り出されて演奏されて、作曲者はあの世でどう思っているか分からないけれど、私たちにとっては非常に興味深いことなのだ。

 そして、今日の演奏会である。レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルという、世界に名の轟くピリオド楽器オーケストラが響かせるメンデルスゾーン━━という興味はあるにしても、まずは「稿」の問題が、好事家の話題になっていた。
 実際に聴いた感じで言えば、「フィンガルの洞窟」は、現行版とはかなりの相違があるけれど、シャイー盤のそれとも大きく異なる稿である。だが他の2曲は、残念なことに(!)基本的に現行版と同じだ、という印象であった。

 そこで、シャイー盤のブックレットにおける巻末の制作クレジット表示と星野宏美さんの解説、今回のプログラム冊子における相場ひろさんの解説、それにオペラシティを通じて教えてもらったオーケストラからの使用楽譜情報などを総合して対比させてみると、以下のようになる。

 「フィンガルの洞窟」は、シャイーが演奏しているのは、ベーレンライター版のホグウッド校訂譜「ローマ稿Ⅰ」だが、今回ミンコフスキが指揮したのは、同じホグウッド校訂のベーレンライター版の「ロンドン稿Ⅰ」。
 また「スコットランド」は、シャイーがトーマス・シュミット=ベステ校訂のブライトコップ&ヘルテル版による1842年ロンドン稿を使用していたのに対し、今回のミンコフスキは、ホグウッド校訂ベーレンライター新版による1843年「決定稿」を演奏。
 そして今回の「イタリア」は、ホグウッド校訂ベーレンライター新版による1833年版(基本的には現行版)が使用されていた。

 という次第で、「フィンガルの洞窟」(ヘブリディース)だけは━━シャイー盤の「別の曲かと紛うばかりの差異」ほどではないにせよ━━途中からみるみる別の楽想に変わって行き、おなじみの主題が見え隠れしつつ、何となくドタバタとした感じで進んで行く面白さが格別であった。こうなると、いっそ「スコットランド」も「ロンドン稿」を演奏してくれれば、どんなにか面白かったろうにと思うが・・・・。

 もちろん、ピリオド楽器のオケでこの3曲を聴くのも、特別な魅力がある。
 何しろこれは、モダン楽器で流麗に演奏される「お上品な」(?)メンデルスゾーンとは違い、各パートの音が荒々しくぶつかり合って、全体に激しく劇的な、時には凶暴なほどの凄味を感じさせる音楽になっているのだ。
 しかし、その荒々しく唸る弦の彼方に舞い続ける木管群は、はっとさせられるほど美しいのである。特に「スコットランド」ではその多彩な構築感が際立っている。
 メンデルスゾーンの木管の扱い方には、とりわけ夢幻的な美しさがあるけれども、モダン楽器オケではすべてが流麗な音になるので、木管のそうした特徴も程々に目立つだけだが、ピリオド楽器オケで演奏されると、その両者の個性が如実に際立って来るのである。
 こういう、新たな話題を投げかける演奏会は、実に素晴らしい。
    別稿 モーストリー・クラシック5月号 公演Reviews

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