2021-06

2018・2・25(日)東京二期会「ローエングリン」第4日(最終日)

     東京文化会館大ホール  2時

 先日観たのは初日公演だが、こちらは別キャストの第2日。
 出演は小原啓楼(ローエングリン)、木下美穂子(エルザ)、小森輝彦(フリードリヒ・フォン・テルラムント)、清水華澄(オルトルート)、加賀清孝(布告官)他。

 今日の組による上演は、初日のAキャストより、「ローエングリン=ルートヴィヒ2世」、「テルラムント=グッデン博士」という構図を非常に強く打ち出していた。
 それは、演技巧者の小森輝彦の存在によるところが大きいだろう。何しろ、第1幕でローエングリンから空手チョップ(?)を食らい、のされてしまう場面からして、派手な演技を見せる彼である。

 そしてそのテルラムントは、冒頭から「グッデン博士」として「ルートヴィヒ2世」を気にし、手を焼いている様子を微細に表現する。
 特に全曲大詰の場面での大きな違いは━━初日には「グッデン博士」があの「傘」を広げて「ルートヴィヒ2世」を静かに奥へ連れて行くだけだったのに対し、こちら小森&小原組は、慇懃無礼に傘を広げて誘う「グッデン博士」を、「ルートヴィヒ2世」が怨み骨髄とばかり、突然その首筋をつかむや、舞台奥の暗黒の彼方に向かって━━おそらくはあの「運命的な湖」に向かって引き立てて行く、という演技に変えられていたのだった。

 あとで事務局に訊くと、これは歌手同士で相談し合ってやったようだ、とのこと。今日の方が劇的で面白いが、やや説明過剰な感もなくはなく、むしろ悲劇的な不気味さから言えば初日の舞台の方に分があるとも思われるが・・・・しかし、どちらが適切なのかは判らない。

 なお、第3幕の結婚式のあとでのローエングリン━━いや「ルートヴィヒ2世」が、憧れのルイ14世のコスプレを施して悦に入る(そういう変な王様だ)個所では、「太陽王ルイ」をイメージするその衣装に、「70年大阪万博」の「太陽の塔」のマークが入っていたのには笑った。
 また第1幕で、ゴットフリートが「矢」で射られた白鳥をかかえているのは今日の演出でも同じ。矢で白鳥を射たのは、ほかならぬローエングリンの父親にあたるパルツィヴァル(パルジファル)なのだから、この物語は「親の因果が子に報い」というやつか。

 準・メルクルの指揮は、今日も速めのテンポで颯爽としていた。第2幕後半近く、エルザとオルトルートの激しい応酬の場面の演奏における強靭な推進性は、特に目覚ましい。
 そのオルトルートを歌ったのは清水華澄。馬力は物凄く、全曲最後の大見得は聴き応え充分であった。

 というわけで、東京二期会としては1979年以来という今回の「ローエングリン」は、深作健太と準・メルクルのコンビによる成功作と呼んでいいのではないか。そして日本人演出家がここまで大胆斬新な解釈を施したオペラの舞台は珍しいと言ってよく、将来に期待を持たせてくれる。
      →別稿 音楽の友4月号 演奏会評
※誤植ご指摘、御礼。修正済。

コメント

いつも関心して読んでおります。文中で少し気になる所が有りました
結婚指揮は結婚式ですよね。二期会の上演は、年ぶりではなく、年以来ではないでしょうか? 

清水さんは凄い!

小生は21日の公演を拝見・拝聴いたしました。一言で言うと、意外と楽しめた(良かった)という印象です。

かなり凝った演出(読み替え)という事前情報に接しており、読み替え演出には、あまりよい印象を持っていないことから、恐る恐る出かけた次第ですが、最初から舞台の美しさに惹きこまれ、それほどの違和感はなく最後まで退屈せずに鑑賞することができました。小生のワーグナー関連知識の乏しさにより、最後のテルラムントが殺されたあたりから音楽進行と舞台の乖離が気になりました(少しついていけなくなりました)が。

歌手については、全体的にバランスが取れていたと思いますが、ダントツに素晴らしかったのは清水華澄さん、圧倒的な声量で存在感を示しました。惜しむらくは、愛らしいお顔立ち(バービーのような・・・失礼)のため、オルトルートの悪女ぶりが舞台姿からはあまり感じられなかったところかと。

21日の公演評で東条先生ご指摘のとおり、第2幕の合唱はちょっとお粗末でしたね。個人的には、なんだこれは、アマチュアの合唱団か、と思ってしまいました。合唱団のレベルは新国立劇場合唱団とかなり差が付いたようですね(婚礼の合唱はオケとずれたし)。準・メルクル指揮の都響は、弦楽器中心に艶のある響きを奏でていましたが、バンダを含む金管がもう少し安定していれば、と思いました。

さて、「魔弾の射手」のチケットを購入しました。コンヴィチュニーの演出、怖いもの見たさです(笑)。

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