2018-06

2018・2・3(土)飯守泰次郎指揮東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

      ティアラこうとう大ホール  2時

 「ティアラこうとう」は、1200席程度の中ホールである。シティ・フィルは、メインの東京オペラシティコンサートホールでの年9回の定期の他に、このティアラこうとうで年4回の定期を開催しているのだが、ホールの規模は小さいけれども、お客さんの雰囲気は、むしろこちらの方が温かいような気がする。

 今日はこのホールでの第52回定期。桂冠名誉指揮者・飯守泰次郎の指揮で、モーツァトの「ドン・ジョヴァンニ」序曲、ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」、チャイコフスキーの「悲愴交響曲」というプログラムだった。コンサートマスターは戸澤哲夫。

 「ドン・ジョヴァンニ」序曲での演奏は、序奏からして重々しい悲劇的性格を感じさせ、主部に入ってもその陰影に富んだ色調が続いて行く。このあたりは飯守ならではの味だろう。シティ・フィルも完璧に応えている。

 「悲愴」は、最初は坦々と進んで行くように感じられたが、第1楽章の展開部の終りあたりからは、音楽が俄然、剛直で激烈な色合いを帯びて来た。
 再現部の第277小節(【Q】)以降になると、あのシティ・フィルが━━などという言い方は今やもう通用しない時代になっているほど、この楽団の演奏水準は上がって来ている━━魔性的な咆哮と慟哭を、怒涛のように繰り返す。ここは飯守が常に「狂気のようになる」くだりだそうだが、近年の演奏━━例えば今日の演奏などでは、その激情もバランスのいい構築になって来ているし、シティ・フィルの音色にも混濁がないので、感銘もいっそう深くなるだろう。
 この激しい慟哭のあとの抒情的な第2主題、あるいは第2楽章も深い情感にあふれており、特に第4楽章は極めて高い格調に満たされていた。

 ベートーヴェンの協奏曲では、未だ20代後半ながら赫々たるキャリアを積んでいる青木尚佳がソリストに招かれていた。
 私は不勉強にして彼女の演奏を聴いたのはこれが初めてなのだが、実はよく解らない━━というのは、このベートーヴェンでの演奏が、あまりにメリハリに乏しく平板で、しかも生き生きした表情が感じられぬものであり、主題が常に同じ表情で繰り返されるのにも唖然とさせられたのである。何かの理由で、無理して抑えて弾いていたのか? 
 だがその一方で、短いカデンツァの個所では、人が変わったように自発的な、勢いのいい音楽をつくり出していたのだ。短いソロの、ほんの2、3秒の間に彼女が聴かせたカデンツァには、ハッとして腰を浮かせたくなったほどの、素晴らしい輝きの高揚が感じられたのである。こちらの方が彼女の本領じゃないのか?

コメント

公正

いつも、楽しく拝読しております。
しかしながら、今回の記事は、やや公正を欠く様に思え、違和感を感じております。
あのシティ・フィルが、、、
唖然とさせられた、、、、
と、わざわざ、強調されるのは、如何なものでしょうか。
若い才能あるアーティストに対して、悪いところは悪いと指摘するにしても、前向きなご発言が好ましいのではないかと。

当日の演奏を私は聴いていない前提ですが、評論家の感想ですから、自由な方がよいのではないでしょうか。
「あのシティフィルが」との表現は、日本語を読めばわかるとおり、普段の高い評価を前提にしていますし、若い演奏者についても、ほめている部分はあります。逆に、若い演奏者にとっては、厳しい意見もときに必要です。しかも、「意図的に抑制したのだろうか」と評者なりに推測を示しています。

何かけなそうとして意図的に書くのであれば論外ですし、そういう評論家は、ファンから相手にされないでしょう。私は、今日の批評を「公正さを欠く」とは思いませんでした。
「評論の公正さ」って何でしょうか。招待された演奏会は批判せず、ほめまくることでないのは明らかです。
ここは、東条さんの感想を、彼なりの上品な表現ではありますが、率直に書いていただける方が、多くの演奏会に行けるわけではない身としては重要に感じます。

小生も毎回楽しく更新を待っております。このHPはあくまで私的なものですので、公正さということにはそれほどこだわらなくてもよいと考えます。そもそも、音楽ジャーナリストではなく、評論家という肩書であれば、辛口のコメントも必要でしょう。最近、辛口の批評が少ないご時世ですので、東条先生のスタンスは貴重だと思います。ただ、個人的には、東条先生一流の、皮肉っぽい物言いが、言われたほうには嫌だろうなあ、と思うことがあります。ストレートに、「さらなる研鑽を要する」と書かれたほうが、後味は悪くないかもしれません。もってまわった言い方に、東条先生の性格がにじみ出ていて、興味深く拝読しております。

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