2021-06

2017・11・20(月)METライブビューイング 「ノルマ」

    東劇  6時30分

 メトロポリタン・オペラの10月7日上演ライヴ映像によるベルリーニの「ノルマ」。
 デイヴィッド・マクヴィカー演出、カルロ・リッツィ指揮、ソンドラ・ラドヴァノフスキー(ノルマ)、ジョイス・ディドナート(アダルジーザ)、ジョセフ・カレーヤ(ポリオーネ)、マシュー・ローズ(オロヴェーゾ)他の配役。上演時間は3時間27分。

 ストレートな演出だが、演技は非常に微細であり、劇的な迫力は申し分ない。
 METならではの豪華な5面舞台が活用されているという話だが、総じて場面が暗いために、はっきりとは判らない。ロバート・ジョーンズの舞台美術も「神聖な樹」である樫の大木をモティーフにしているという説明があったが、これも暗くて定かではない。
 要するに、そういう神秘性を含んだ重苦しい場面で繰り広げられる人間ドラマだということである。それに、主役歌手3人の演技が抜群に上手いので、緊迫感も充分だ。

 ただし今回は、第2幕の「戦いだ!」の激しい合唱のあとに叙情的な部分が続く版が使用されていたが、これは音楽的には素晴らしい流れとはいえ、カタストロフへの緊迫感の保持という点からみると、さすがのマクヴィカーもちょっと扱いかねていたようにも感じられる。

 ひときわ優れていたのが、ディドナートの演技だ。
 彼女の説明によると、アダルジーザを演じ歌うにあたり、マクヴィカーからフェデリコ・フェリーニ監督の映画「道」を見るように勧められたという。あの主人公ジェルソミーナの「純真さと献身的な心」というコンセプトを、そのままアダルジーザに当てはめて欲しい、と━━。その演出家の意図を鮮やかに具現したディドナートも見事だった。

 カレーヤも結構上手い。ポリオーネという身勝手で無責任な男をこれだけいやらしく、しかも堂々たる風格で演じるとは、たいしたものである。大詰での悔悟の演技も、体格が立派だけに、現実味を感じさせた。そしてもちろん、ラドヴァノフスキーの巧さは言うまでもない。
 この3人、幕間のインタヴュ―では、実に陽気だ。そして役柄の解釈について明るく語ってくれる。オペラの演劇的要素について如何に深く認識しているかの証拠である。

 カルロ・リッツィの指揮は、劇的な面では少々頼りなく、序曲などトロトロしていて、どうなることかと思わせたが、しかし歌手たちに「歌」を美しく歌わせるという点では、やはりうまいものである。主役3人が歌唱面で素晴らしかったこともあるが、特にノルマとアダルジーザの二重唱は、どれも圧巻と言えるほど見事だったのだ。
 (「和解の二重唱」の最後の部分で、ディドナートがスタッカートで歌っていたのに、ラドヴァノフスキーがレガートで歌っていたことだけは、その解釈について詳しい方の意見を伺いたいところだが)。

 総じてこれは、実に聞き応えのある、素晴らしい上演だ。ノルマという役柄には本当に度外れた歌唱力と演劇的感覚が要求されるのだということが、つくづく実感できた演奏であった。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2841-a1b4a6b3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」