2020-05

9・8(月)サイトウ・キネン・フェスティバル
小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ 

  長野県松本文化会館

 松本訪問は、これが今季3度目。今回は小澤征爾が指揮する「オーケストラBプロ」で、モーツァルトの交響曲第32番、武満徹の「ヴィジョンズ」、マーラーの「巨人」。このプログラムは、今日が2日目の公演。

 正直なところを言えば、最初のモーツァルトは、昔ながらのこのオーケストラの癖がモロに出ている感じで――つまり、ガリガリ弾きすぎるのか、音が非常に荒っぽくなるのである。「アレグロ・スピリトーゾ」にふさわしい活気もエネルギーもリズム感も充分ある演奏なのだが、勢いだけでは解決できない。

 武満も、小澤の指揮にしては意外なほど無造作なところがあり、何かしら精緻な美しさに不足する演奏だった。新日本フィルや東響だったら、もっとしっとりした味を出すだろう(もっとも、サイトウ・キネン・オーケストラのサウンドは、コンサートマスターによっても随分変わることがこれまでの例で証明されている。私の主観では、矢部達哉がトップに座った時がいちばん澄んで綺麗な音が出ていたように思う)。

 その点、休憩後のマーラーは、比較的余裕のある響きが感じられ、音楽の表情もぐっと瑞々しくしなやかになって、小澤がかつてボストン響との録音で聴かせたような爽やかな歌が、このサイトウ・キネン・オケからも再現できていた。
 たとえば第1楽章で、第1ヴァイオリンがあの「さすらう若人の歌」にも出て来る旋律をスラーで美しく奏し、チェロがピチカートのリズムでそれを彩っていくあたりの音楽の進行の快さ。また第3楽章中間部、これも「さすらう若人の歌」の第4曲最後に出て来る「菩提樹が」の旋律主題での、スコアに指定されているppをさらに強調した、神秘的なささやきにも似た叙情性など、――これらも小澤の感性の良さと、このオーケストラが出した久しぶりの珠玉の響きと言えるだろう。そういえば、この楽章冒頭のコントラバスのソロも、他に例を見ないほどきれいな音色だった!

 総じてこのサイトウ・キネン・オーケストラは、あまり力み返らない演奏をした時がいちばん良く、名手ぞろいのオーケストラとしての本領を発揮する。この「巨人」の演奏でも、どちらかといえば抑制された、均整の保たれた響きが基調になっていて、弦も金管も、刺激的な音は避けられていた(第1楽章最後のティンパニだけはちょっと雑だったが……)。

 松本は、夕方になるとすでに肌寒い。今年のこの音楽祭も、明日で閉幕。

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