2021-06

2017・11・4(土)イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出「オセロー」

      東京芸術劇場プレイハウス  1時

 「オセロー」というからには、もちろんオペラでなく、オリジナルのシェイクスピアの芝居のこと。オランダの演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェの演出、劇団「トネールグループ・アムステルダム」メンバーの出演。オランダ語による上演で、日本語字幕がつく。

 上演台本はモロッコ系オランダ人のハフィッド・ブアッザという人によるものの由。シェイクスピアの長大な戯曲から、部分的に入れ替えるなどして要領よく抜粋し、登場人物もわずか9人に絞り(群衆はいない)、全体を各80分と60分の2幕構成にしている。このため物語は、良くも悪くも「家庭内悲劇」の様相を呈するが、それも演出の狙いなのであろう。

 原作の前半部分はかなり短縮されているけれども、しかし後半部分への伏線として最も重要な、デズデモーナの父ブラバンショーがオセローに叩きつける捨てゼリフ━━「父親を欺いたほどの娘だ、今に貴様をも裏切るかもしれんぞ」がちゃんと生かされているのはいい(この伏線場面はボーイト/ヴェルディのオペラにはないので、オテロが短絡的で単純な性格の人間というイメージが強くなってしまう)。

 ドラマはもちろん現代設定で、シェイクスピアの原作にある「人種差別意識」を浮き彫りにしているのが最大のポイントだ。といっても、オペラでのように、オテロの顔を黒人的にするなどということはやられていない。もっぱらセリフの中で描き出されているような、アラブ人に対するヨーロッパ人の差別意識と、それに対するオセローの焦燥感とのせめぎ合いにより、現代でもなお繰り返されている人種問題や、欧州とアラブとの確執がクローズアップされるという仕組みである。登場する男たちが、もちろんオセローを含めて欧州の軍服を着ていることも、現代の政治的状況を鋭く描くのに役立っているだろう。

 オセローを演じていたのはハンス・ケスティングという人。なかなかの風格である。イアーゴーはルーラント・フェルンハウツという人だったが、こちらはあまり個性的な存在を感じさせない。

 最初から最後まで緊迫感に満ちた、素晴らしい上演だった。私などはふだんのテリトリーの関係から、どうしてもオペラと比較しつつ観てしまうのだが、今回の舞台は、オペラの演出でも名の知られているヴァン・ホーヴェらしく、これをこのままオペラの舞台に持って行っても成り立つだろうと思えるくらい、演技の進行のリズムがいい。
 効果音の使い方にも同様のことが言える。台詞の背景に微かな音量で交じって来るシンセ的な音響の中に、オセローの心に嫉妬の疑いが兆す時、あるいは殺意が漲って来る時などに、それぞれ特定のリズムを含む響きが関連づけられ、まるでオペラにおけるライトモティーフのような作用をしているのが面白かった。

 これは2003年にアムステルダムで初演され、世界各地で上演されているプロダクションとのこと。今回は日本初演になり、この3、4、5日の3回のみの上演である。
 彼に日本で、思い切った演劇的演出によりオペラの舞台を手がけてもらえたら、さぞ素晴らしいだろう。

コメント

この演劇は今回観ていません。ただこの演出家の名前を知っていたので投稿しました

イヴォ・ヴァン・ホーヴェ(Ivo van Hove)のオペラ演出をこの7月2日、アムステルダムでサロメを観ました。NHKの衛星放送でもやりました。とっても興味深いものでした。サロメとヨカナーンの人間関係におけるサロメの頂いた妄想的な世界を鋭く描いていたと思います。
なぜ出かけたか。ダニエレ・ガッティ指揮ロイヤルコンセルトへボウ管がオケピットに入る年1つのプログラムだったからです。配役も豪華でした。

その後ミュンヘンオペラフェスティヴァルに行って、影のない女 烙印を押された人々 魔笛 タンホイザーを観ました。

まっ最初に出かけたサロメの演劇畑の演出家の演出を観たせいで、オペラの演出家との違いにギャップをミュンヘンで感じてしまいました。
それは、映画「エクソシスト」を手掛けたウィリアム・フリーキン監督のバイエルン歌劇場でのサロメの演出ととも同じようにグッと惹きつけられる相通じるものがありました。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2824-cb511816
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

ブログ内検索

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」