2021-06

2017・10・15(日)小泉和裕指揮九州交響楽団

      アクロス福岡シンフォニーホール  3時

 第362回定期公演で、音楽監督・小泉和裕の九響(定期)デビュー40周年記念、という意味あいが含まれていた由。ついでに翌日にあたる彼の誕生日を祝おうということで、終演後には関係者一同によるパーティも開催されていた。
 プログラムは、メンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」と、オルフの「カルミナ・ブラーナ」。コンサートマスターは扇谷泰朋。

 「宗教改革」はかなり遅めのテンポで、荘重さを前面に出した演奏だ。第1楽章序奏のアンダンテはもちろん、主部のアレグロ・コン・フォーコも、第2楽章のアレグロ・ヴィヴァーチェも、抑制されたテンポでじっくりと丁寧に進められる。第3楽章は、まさしく祈りの歌である。そして第4楽章で、矯められたエネルギーは解放される・・・・。

 ━━それにしても、九響は本当に素晴らしいオーケストラになった。39年前、私がFM東京時代に九響からライヴ演奏会収録テープを借りて放送した頃の演奏とは比べものにならない高水準の演奏である。

 「カルミナ・ブラーナ」は、協演の声楽ソリストが青山貴、藤木大地、安井陽子。合唱には九響合唱団と久留米児童合唱団がクレジットされているが、メンバー表には「多目的混声合唱団Chor Solfa!」、「コールエテルノ」「福岡工業高校グリークラブ」「ちくしの混声合唱団」「九州大学男声合唱団コールアカデミー」の各団体も共に名を連ねている。総勢200名以上の大編成で、すこぶる分厚い、力強い響きを出した。

 全体の演奏は、まさに小泉和裕らしく、シリアスなものである。誇張を排し、正面切った生真面目なアプローチで作品を描き出すのは、小泉の指揮の昔からの特徴だ。酔興の歌の個所でさえ、基本的にはあくまで羽目を外さない。3人のソリスト(いずれも見事な好演だった)は、それぞれある程度の芝居気を出してはいたけれども、小泉は、音楽全体の容を決して崩さない。
 たしかに、この曲の歌詞が底抜けの歓びの歌でなく、実は運命の重圧を嘆く人間の自棄的な心を描くことに重点が置かれているという点に着目するなら、それは大いに説得力を持つ解釈であると思われる。

 それだけに、運命の車輪の無情さを歌い上げる最初と最後のくだりは、重々しく轟くような重圧感に満ちていて、すこぶる迫力があった。特に後者では、さすがに昂る感情を抑えがたくといった感で、みるみるテンポを速めて全曲の頂点をつくって行く。このため、合唱を含めたアンサンブルに少々乱れを生じたとはいえ、取るに足らぬ瑕疵に過ぎぬ。
 小泉和裕の近年の指揮には、いっそうの緻密さと重厚さが増しているようである。大受けを狙う華やかさないので、ともすれば地味な存在に受け取られる傾向なしとしないが、その実直な姿勢は高く評価されるべきだろう。

 なお、「青山ヴォータン」のファルセットは、私は初めて聴かせていただいたが、なかなかお見事なものだった。
     別稿 西日本新聞

コメント

このような通りいっぺんではない絶賛のお墨付きをいただくと、九響の本拠地から少し離れた九州の音楽ファンも誇らしく、自分が褒められたわけでもないのに嬉しいものです。「日本のオケなんて」とか「地方のオケなんて」とブランド主義で音楽を聴く向きもあるようですが、誇りを持って自分の耳で音楽を楽しんでいく支えになります。

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