2017-11

2017・10・11(水)西村悟テノール・リサイタル

     東京オペラシティ コンサートホール  7時

 活動の場を目覚ましく拡げているテノールの西村悟(にしむら・さとし)が、オーケストラとの協演によるリサイタルを開いた。
 コンサートは「五島記念文化賞 オペラ新人賞研修記念」と題されており、この名称だけではよく解らないけれども、要するに平成25年度の「五島記念文化賞オペラ新人賞」を受賞、イタリアで研鑽を積んだその「研修結果を披露するための」リサイタルである由。今回は山田和樹指揮の日本フィルがバックを務めるという、かなり贅沢なリサイタルとなった。

 西村悟が歌ったのは、ドニゼッティの「愛の妙薬」と「ランメルモールのルチア」、ヴェルディの「マクベス」、マスネの「ル・シッド」、チャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」、プッチーニの「ラ・ボエーム」と「トスカ」、アンコールでは同「トゥーランドット」とレハールの「ほほえみの国」といったオペラからのアリアだったが、どれも体当たり的な熱演で、若いテノールの満々たる意欲と気魄が伝わって来るような感であった。

 前半のドニゼッティのアリア3曲では、緊張のためだったのか、高音域が伸びず、聴いている方でもハラハラさせられたけれども、高音が不安定になった時にもそのまま強引に押し切って行ったあたりが、若手らしくていい。

 休憩後は持ち直し、尻上がりに調子を出して行ったが、特にマスネの「おお裁きの主、父なる神よ」やチャイコフスキーの「レンスキーのアリア」など、あまり「絶叫しない」曲では、非常にいい味を出していた。
 アンコールでは気も楽になったか、「君こそわが心のすべて」と「だれも寝てはならぬ」では、気持よさそうに大見得を切り、聴衆を湧き立たせていたのは祝着である。

 欲を言えば━━これはあくまで印象に過ぎないが━━イタリアオペラもフランスオペラもロシアオペラも、すべて同じように歌ってしまうこと、各国語の歌詞に区別がつかないこと、登場人物の性格や心理状態の描き分けが徹底していないこと、などを感じるのだが、こういうことはすべてこれから彼が解決して行くこと。今は若い勢いで、何でもやってみるのがいい。
 とにかく、楽しみなテノールである。終り近くには「感謝のスピーチ」を試みていたが、なかなかの感激性の人のようだ。

 山田和樹指揮の日本フィルは、「セビリャの理髪師」序曲や、「エフゲニー・オネーギン」の「ポロネーズ」、「マノン・レスコー」間奏曲などを演奏していたが、やはり定期公演でのあの緻密な演奏とは、かなり趣を異にしていた。
 それでも、ヤマカズの「持って行き方の巧さ」は、相変わらずである。「星も光りぬ」から前述のアンコール曲2曲などでは、テノール・ソロを煽り、包み込み、ドラマティックに追い込んで行く巧さを存分に発揮してくれた。この人は、音楽における劇的な演出展開といったものに、生来秀でているらしい。オペラ指揮者としても大成する人だろうと思う。

コメント

ちょっと・・・(う~ん)でした。

小生も拝聴いたしましたが、残念ながら、評価はちょっと・・・・(う~ん)でした。調子があまりよくなかったのでしょうか、音程不安定、声量不足(高音域の伸び不足)、表現の単調さが気になりました。

音程は、全体を通じ、わずかに低い(ぴったり決まっていない)ところが耳につき、「人知れぬ涙」のカデンツァなど、明らかに音程が下がって、オケとのピッチの違いが露呈しました。声量についても、オケの響きの中に声が埋没してしまうところがあり、不満を感じました。加えて、西村さんの歌唱は、非常に生真面目というか、真摯さ・誠実さは伝わってくるものの、全体を通じてやや一本調子であり、陰影や色彩感が少し不足しているように思えました。

なんか、ボロクソ言ってるようで申し訳ありませんが、東条先生の「緊張のためだったのか、高音域が伸びず、聴いている方でもハラハラさせられた」「イタリアオペラもフランスオペラもロシアオペラも、すべて同じように歌ってしまうこと、各国語の歌詞に区別がつかないこと、登場人物の性格や心理状態の描き分けが徹底していないこと、などを感じる」というコメントに強く共感した次第です(正直言って、東条先生の評価ほど好意的ではないというのが小生のスタンスでありますが)。

どうしても、直前に聴いた「蝶々夫人」の宮里直樹さんと比較してしまうのですが、声量、声質等は、明らかに宮里さんの方が満足できました。小生が、今、我が国でもっとも素晴らしい声を聴かせてくれると評価している歌手(男声)は、テナーでは宮里直樹さん、バス(バリトン)では青山貴さんなんですが、西村さんには、次回の機会に是非挽回を期待したい思います。

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