2021-06

2017・10・9(月)東京二期会 プッチーニ:「蝶々夫人」

      東京文化会館大ホール  2時

 東京二期会の定番、栗山昌良演出による「蝶々夫人」。
 何度も再演されている名舞台で、私も3年前(2014年4月23日の項)に観たばかりだ。

 この栗山演出は、日本的な美を追求した舞台として、「蝶々夫人」の演出史における不滅の完成品であろう。もちろんこのスタイルがこのオペラの演出として唯一無二であるという意味ではないけれども、ここまで蝶々さんとスズキの演技に日本女性の美しさを織り込んだ演出は、昔はともかくとして、今日では他に例をみないのではないか、と思われる。石黒紀夫の舞台美術、沢田祐二の照明、荒田良の舞台設計、すべてが均衡を保っている。

 それゆえ、今回は演奏と、主役歌手にも注目。
 ガエタノ・デスピノーサの指揮する東京交響楽団が、今回は絶好調。直截で速めのテンポの裡に、プッチーニが散りばめた日本の旋律群も鮮やかに浮き彫りにされていた。もっともこれは、日本のオーケストラが演奏すれば自然にそうなるのかもしれないが。10列ほぼ中央で聴いていたが、ピットから響いて来る音が美しかった。

 歌手の中では、今回最も注目されていた一人が、題名役を歌う森谷真理であった。最近活躍が目覚ましいソプラノである。
 今日、彼女が演じたこの役は、楷書体の蝶々夫人とでも言ったらいいか。いかにも武士の娘らしく端然、毅然とした、知性的な蝶々さんという表現だ。
 たとえば怒りのあまり衝動的に米国国旗を引き抜いて叩きつけるような女性(笈田ヨシ演出、今年2月東京芸術劇場)とは全くの対極に位置して、あらゆる面に日本女性の美学とでもいったものが追求されている━━それが栗山演出の蝶々さんなのだが、それを森谷真理は、完璧に演じていた。
 歌唱にもそれと同じ特徴が表れている。高音は実に張りのある美しく澄んだ声だ。これで中低音と、弱音がもう少しよく響くようになってくれれば、いっそう素晴らしくなるだろう(以前の別のオペラではそんなことは気にならなかったのだが・・・・)。
 いずれにせよ、新しいタイプの蝶々さんが出現したことを慶びたい。

 もう一人は、ピンカートンを歌った宮里直樹である。昨年は藤原オペラの「愛の妙薬」でネモリーノ、今年も日生劇場で「ラ・ボエーム」のロドルフォなどを歌い、評判を上げている人だが、私は今回初めて聴いた。まだ30歳だそうである。見事に伸びのいい、力に満ちた声で、これは楽しみだ。
 そして、山下牧子の巧さは、ブランゲーネなどをはじめ、これまでさまざまな作品で証明されて来ているが、今回も完璧なスズキ役であった。このオペラの舞台が引き締まるかどうかは、実はスズキの出来次第で決まると言ってもいいのである。

 他に、シャープレスを今井俊輔、ゴローを升島唯博、ヤマドリを鹿野由之、ボンゾを勝村大城、神官を原田勇雅。二期会合唱団。

 4時45分終演。
 第1幕の最後で、静かに閉じて行く音楽に浸っていた観客を飛び上がらせるような大声でブラヴォーを喚く奴が下手側最前列近くにいたかと思えば、それを客席後方から大声で非難し、正当にたしなめた人がいる。しかしまた、その言葉の内容がはっきり聞こえなかったらしい下手側10列前後にいたオヤジが「何だ? 野次か? けしからん」と怒り出す、という騒ぎもあって、やれやれ・・・・。昨日も、今日も・・・・。
 ブラヴォーはあったほうがもちろんいいと思うが、えてして、目立ちたがり屋やサクラのけたたましい下品な喚き声が多いのが困る。センスが豊かで美しいブラヴォ―の声というのは、なかなか無いものだ。

コメント

サクラ?応援団?

二期会の公演には数十年通っていますが、いかにも知人、関係者と思われる人たちによるブラボーが昔から気になっています。歌唱の出来には関係なく飛び交うのでかなりの違和感。今回はお客様が多かったですが、半分程度の入りの時にこれをやられるとさらに目だって、一般客は居心地が悪い。

来日オペラなどでも、客席後方から、本職歌手と思われる立派なブラボーがかかることは多い。最近は、幕前に演奏が終わってからと注意されているにもかかわらずだ。
この際、いっそのこと試験的に、ブラボー禁止にしてみてはどうかと思う。
だいたい、女性歌手に対してブラボーってのは、あまりにいただけない。複数にブラーヴィーと声をかける人も増えてきたが。

主催者が雇っているという証拠はないのだが、静かなエンディングで、幕も下りないうちから、ブラボーと叫ぶバカたれはどうしたものか。バカである。
つきあっておれないし、そんなもので、長い公演の感動を台無しにされたくないから、私の耳は、自動的に聞こえなかったことにして、やり過ごしている。

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