2021-06

2017・9・14(金)上岡敏之指揮新日本フィルハーモニー交響楽団

      サントリーホール  7時

 新日本フィルの新シーズン開幕定期は、音楽監督・上岡敏之の指揮で、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第4番」(ソロはデジュ・ラーンキ)とマーラーの「交響曲第5番」。コンサートマスターは崔文洙。

 コンチェルトでの上岡と新日本フィルの、陰影のあるふわっとした音━━往年のチェリビダッケの音づくりを思い出させるが、もちろん同じではない━━も悪くなかったが、やはり面白かったのは、両者が全力を挙げたと思われるマーラーの「5番」だった。
 これはもう、マーラーがスコアに書き込んだ目まぐるしいばかりの指示を、更に極端なまでに強調した演奏である。デュナミークも、テンポも、音色さえも、いっときたりとも落ち着くことなく、不断に変化する。アクセントさえ聴き手の予想を上回り、時には裏切り(?)、強調される。

 第1楽章など、悠然たる葬送行進曲などでは決してなく、常に不安定な精神を描き出したような演奏だ。ゆっくり話していたかと思うと、突然猛烈な早口になる。終結近くのフォルテ3つの個所など、まさに哀しみの激情が堰を切ってヒステリックに暴発するというイメージの演奏ではなかったか?━━ここは、今日の「上岡のマーラー」の中でも、象徴的な個所だったと思われる。

 とにかくこれは、神経質で、呻吟や歓びや、悲哀や絶叫などが絶えず交替して行くという、あの精神分析的なマーラーの音楽を赤裸々に再現した演奏と言えるだろう。そういうマーラー演奏は、著しく聴き手を刺激し、音楽にのんびり浸っていることを許さない。
 上岡の指揮が個性的であることは、私たちはから以前から心得ているが、そのユニークさが何処から生まれたものであるかをじっくりと考えさせられる好例が、今日の「5番」の演奏ではなかったろうか?

 指揮者のこういう主張を、新日本フィルが今日のように巧く表現できるようになっているというのは、両者の呼吸が合って来た証明であろう。開幕第1弾定期としてそれが示されたのは、ありがたいことであった。
 これでもう少し、アンサンブルが緻密になり、ホルンやトランペットが肝心の聴かせどころでポロリとなることがなければ、文句ないのだが━━。

コメント

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16日のみなとみらいの公演に、怖いもの聴きたさで行きました。何ともB級間満載のマーラーで、終始居心地が悪く、音楽への集中を遮られ、それが指揮者の狙いだというなら、芸術的な目的は達成されたのかもしれませんが、しかしこれで楽員や聴衆の支持は得られ(てい)るのでしょうか。みなとみらいは3階席は販売されておらず(階段通行止め)、1階2階もざっと見、6割くらいの入りでした。

上岡敏之考

ペトレンコバイエルン国立管へのコメントが先になったことをお詫びします。他の方のこめんとを見ても、他のブログ等を見ても上岡氏への否定的な感想は多いようですね。地方在住で、彼の指揮はテレビ放送された新日フィルとのブルックナー3番しか聴いてませんが、彼の異質感はそれのみで十分伝わりました。東条先生は上岡と新日フィル団員との関係を「両者の呼吸が合ってきたのだろう」と客観的に述べておられますが、私は果たしてそうだろうかと思います。実演を聴いてないのに言い過ぎですかね?(笑)

上岡さん

遅ればせながらのコメントを書き込むことをお許しください。新日フィル、バイエルン国立管、いずれも拝聴いたしました。

上岡さんのマーラー5番と言えば、何といってもヴッパタールのオケを率いた来日公演が鮮烈な記憶を残しました(前プロのモーツァルトも含め衝撃的な素晴らしさでした)。その時以来、上岡さんに注目するようになり、首都圏のオケへの客演には欠かさず通い、新日フィルの定期会員にもなりました。

ところが、一番最初の、あの心を揺さぶられるような演奏には、なぜかその後、接することができておりません。というよりも、時間が経つにつれて、異様なテンポ設定、細かなところがデフォルメされた表情などへの違和感を感じるようになってきたというのが正確なところです。テンポ設定についていえば、読響との共演でしたか、ブラームスの交響曲で第1楽章の繰り返しのところで、ギアをチェンジし、ぐっとテンポを速めたところなど、オーッと引き込まれることもあったのですが、同じ読響との第九では、とてもじゃないがもうついていけませんでした。

最初の演奏で感じたものが今はもう得られない。それは、上岡さんが変わったのか、小生が変わったのか、それとも他の要因によるのか、まだ結論は出ておりません。

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