2021-06

2017・9・4(月)大野和士指揮東京都交響楽団のラフマニノフ

      東京文化会館大ホール  7時

 東京都交響楽団が秋のシーズンの幕を開けた。

 大野和士が音楽監督に就任して以来、このオーケストラの定期公演のプログラムには、20世紀の作品が格段に増えたような気がするのだが、それはコンサート・レパートリーの開拓という意味から、大変結構なことであるに違いない。今日のラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」と「交響曲第3番」も、音楽のスタイルは19世紀ロシア音楽のそれを引きずっているとはいえ、とりあえず20世紀音楽のプログラムだ。

 協奏曲でのソリストは、今年27歳のチャン・ハオチェン。澄んで伸びやかな響きを持った演奏が素晴らしい。第1楽章の前半では何となく抑制した演奏で、慎重に出て来たという印象だったが、第3楽章などでは胸のすくようなヴィルトゥオーゾを発揮、鮮やかにエンディングを決めた。おそらく指揮者とともに、このフィナーレに頂点を置くという形で全曲の演奏を設計したのではないかと思われる。

 大野と東京都響も、このエンディングでは猛然と煽り立てるなどの洒落っ気を発揮していたが、ほぼ満席の東京文化会館大ホールでは概して音も吸われ気味で、どれほどオーケストラが瑞々しく歌おうと、全体にドライな━━乾いた音になってしまう。
 こちらの聴いた位置が2階正面最前列の席だったために猶更そのように聞こえたのだと思うが、特に「第3交響曲」では、最強奏の個所が妙に荒々しく響くなどして、作品本来の華麗なオーケストレーションとロシア的な色彩感、あるいは甘美なラフマニノフ節(!)などが薄められて聞こえるのがもどかしかった。別の席で聴けば、またはもっとよく響くホールで聴いたとしたら、この印象はかなり違ったかもしれない。

 聴いたとおりに受け取れば、この演奏は19世紀のロシア音楽の残映というよりも、20世紀のインターナショナルな、かなり鮮烈な近代の音楽というイメージでこの作品を描き出していた、というようにも感じられたのである。

 大野の指揮と都響の演奏が、極めて緻密で精緻だったことは確かだろう。例えば第1楽章の第2主題、チェロが上昇して行くあの美しい主題の2小節目後半からの、イ━嬰ハ━ロと動く個所で、スコアに指示されているイ音のテヌートを生かし、嬰ハ音のあとをちょっと切るようにしながら歌わせて行くあたりなど、随分念入りで細かいな、と感心させられる。もっとオーケストラに近い位置で聴いて見たかったなとも思う。コンサートマスターは山本友重。
   モーストリー・クラシック11月号 公演Reviews

コメント

チャンについて

難曲を難なく弾きこなし、確かに終楽章の盛り上げも見事でした。
アンコールのMozartのピアノソナタは予想した通りの、柔らかく淡々としたタッチが良かった。
大曲の間の清涼のひとときでした。

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