2021-06

2017・8・27(日)びわ湖ホール制作 サリヴァン:「ミカド」

      新国立劇場中劇場  2時

 びわ湖ホールが制作、8月5・6日に上演したサリヴァンのオペラ「ミカド THE MIKADO」が、新国立劇場の「地域招聘オペラ公演」として、昨日と今日、東京でも上演された。
 園田隆一郎指揮の日本センチュリー交響楽団がピットに入り、松森治(ミカド)、二塚直紀(ナンキプー)、迎肇聰(ココ)、竹内直紀(ブーバー)、飯島幸子(ヤムヤム)、吉川秋穗(カティーシャ)他が出演。演出が中村敬一、舞台美術が増田寿子。中村敬一訳詞による日本語歌唱で、英語と日本語の字幕がついた。

 これは、19世紀末に英国で作曲された、日本を舞台にした超荒唐無稽の物語のオペラを、日本人のキャストとスタッフが「バタ臭い」荒唐無稽なスタイルで制作上演したもの、とでも言うか。
 滅多に上演されないオペラをよくやってくれた、びわ湖ホールらしい意欲的な、貴重な企画だった━━と申し上げようと思って観に行ったのだが、期待は悉く打ち砕かれ、何とも落胆して席を立った、という結果となった。

 これを観ていて、私はまるで、昔々接した1950年代の頃の上演にタイム・スリップしたような錯覚に陥ってしまったのである。
 もともと軽快なオペラのはずなのに、演奏のリズムが重くて弾まないし、舞台の演技もセリフも、軽快なリズム感とスピーディな進行に欠ける。演出も、半世紀前のそれを思い出させるような野暮ったいスタイルで、失礼ながら、古色蒼然という印象なのである。もう少し、現代のオペラ演出らしい新機軸が考えられなかったか? 

 ダンスも、もっと音楽に合わせたものだって出来るだろう。1982年のカナダのストラトフォード・フェスティバル上演の映像があるが、あそこでは扇子を開いたり閉じたりするそのリズムさえ、音楽と見事にぴったり合わせていたではないか。
 それにまた、流行の品のないギャグを、TVのバラエティさながら、けたたましい声で入れて笑わせようとするなど、陳腐極まるアイディアだ。喜歌劇なら、もっとピリリと皮肉の利いた、洒落た風刺を散りばめるべきではないのか。

 歌手たちは、「びわ湖ホール4大テナー」のうちの2人、竹内直紀と二塚直紀を中心に、健闘していた。
 しかしその一方、女声歌手たちが━━特にヤムヤム役の歌手がそうだったが━━セリフを、相変わらず声を頭のてっぺんから出すような甲高い、歌うようなファルセットで喋る旧態依然のスタイルを続けていることには、全くなさけなくなった。もともと日本のオペラ歌手、特に女性歌手たちには昔からこういう癖が絶えないのだが、今の時代、もういい加減に普通の喋り方に戻して、台詞にも劇的な演劇的表現を生かすようにしたらどうかと思うのだけれど、音楽学校の教え方のせいなのか、こればかりはどうしても修正できないらしい。かつて日本のある若い演出家が、それに困り果て、嘆き、ついにサジを投げてしまったのを知っている。

 そんなことをあれこれ含め、結局、日本の(この種の)オペラ上演のスタイルは、60年前も今も、基本的には全然進歩していないのだな、という感を抱かされてしまったのだ・・・・。
 進歩したものがあるとすれば、背景に浅草雷門から清水寺から、はてはグリコから串カツまで、脈絡なしに投映できるプロジェクション・マッピングの活用くらいかもしれない。
      別項 モーストリー・クラシック11月号 公演Reviews

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