2021-06

2017・8・26(土)セイジ・オザワ松本フェスティバル
「ふれあいコンサートⅡ」

    ザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール) 4時

 JR松本駅から大糸線で2駅目、島内駅の傍にあるザ・ハーモニーホール。木立に囲まれた美しい環境の中にある落ち着いたホールだ。
 ここで行なわれる室内楽プログラム「ふれあいコンサート」は今年も3回あるが、どれも興味深いラインナップで、考えようによっては「オーケストラ コンサート」よりも面白いと言えるかもしれない。

 今日は前半がジャック・ズーン(フルート)の編曲による、彼が中心になった演奏で3曲。バッハの「フルート・ソナタ ハ長調BWV.1033」(チェロはイズー・シュア、ハープ吉野直子)、ラフマニノフの「悲しみの三重奏曲第1番」及びドヴォルジャークの「ピアノ三重奏曲第3番」(チェロはイズー・シェア、ピアノ江口玲)。後半は、ヴェリタス弦楽四重奏団が演奏するシューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」━━というプログラムだった。

 素晴らしい音響で有名なこのホールで聴く室内楽の演奏会は、まさに至福のひとときといえるだろう。フルート、ハープ、チェロがふくよかな音色で開始するバッハの作品など、これぞ「高原の音楽会」という雰囲気を感じさせて、ここまで聴きに来た甲斐があったという気分にさせてくれる。
 ジャック・ズーンも、自分が編曲したのだから当然だろうが、いかにも軽々と、気持よさそうに吹きまくっていた。特にドヴォルジャークのトリオでの演奏は、3人の感興が盛り上がっていたようで、圧巻だった。

 「死と乙女」は、ヴェリタス弦楽四重奏団という名の、サイトウ・キネン・オーケストラのメンバーでもある4人の演奏が、何しろおそろしく巧い。
 ヴァイオリンが岩崎潤(ナッシュビル響コンマス)と島田真千子(セントラル愛知響ソロ・コンマス)、ヴィオラが小倉幸子(フィルハーモニア管首席)、工藤すみれ(ニューヨーク・フィル所属)という顔ぶれで、2015年の結成とのことである。
 もちろん常設のカルテットではないわけだが、しかしその見事なテクニックによる完璧な音の均衡は比類ない。音色は明るく洗練され、切れ味のよいリズム感と瑞々しい歌に富み、その弛緩のない推進性は驚異的である。

 ただ、その鮮やかな躍動感に比して、陰翳が著しく不足しているのも、また事実と言わなくてはなるまい。作品に籠められているはずの、デモーニッシュな要素は、ほとんど聴き取れない。それよりも、若々しいエネルギーと、スピーディなスポーツ的快感が発揮された演奏である。まあこれは、彼らの若さと、常設でない四重奏団ゆえの、止むを得ざる特徴と言うべきだろう。だが、そういう快活さを愉しむ聴衆も多いのは確かだ。客席は沸きに沸いていた。
 6時20分終演。

 このホールは、これまでタクシーとか、自分のクルマとか、知人のクルマで行ってばかりいた。今回、初めて大糸線(単線)に乗って行ってみたのだが、午後2時台や3時台は1時間に1本という過疎運行なので、コンサートに行くには注意が必要だ。帰りの松本行きは、午後6時台だけは幸いにも3本運転されている。但し、もし6時51分のに乗り損なったら、次は7時台の遅い時間の電車しかなく、午後8時松本発の最終の「スーパーあずさ」に乗るには甚だ危ないという状況になってしまう。
 それにしても、島内駅から見た夕暮れの北アルプスの山々のシルエットとたなびく白い雲、残照に赤く輝く空の雲の美しさといったら、何に喩えたらいいか。いい室内楽と、素晴らしい山々の眺めと、爽やかな大気。これ以上、何を望むことがあろう。
      →別項 モーストリー・クラシック12月号    
      →別項 信濃毎日新聞

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