2021-06

2017・8・25(金)セイジ・オザワ松本フェスティバル
「オーケストラコンサートB」

      キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館) 7時

 松本の人たちは蒸し暑いと言っているけれど、それでも30度をずっと下回る。東京の36度(実際はもっとあるだろう)の焦熱に比べればどれだけマシか知れぬ。

 今年の「オーケストラコンサート」のうち、「A」は18日と20日に開催され、ファビオ・ルイージの指揮で、マーラーの「第9交響曲」が演奏されたはずだが、私はバイロイトに行っていたので残念ながら聴けなかった。大いに盛り上がったという話である。
 今日は「B」の初日で、最初に小澤征爾がベートーヴェンの「レオノーレ」序曲第3番だけを指揮し、そのあとはナタリー・シュトゥッツマンが指揮して、マーラーの歌曲数曲(ソプラノ・ソロはリディア・トイシャー)とドヴォルジャークの「第7交響曲」を指揮するというプログラムだった。渋い。

 小澤の「レオノーレ」は、今回はかなり重厚な演奏になった。サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)は、矢部達哉がコンサートマスターを務める時には、以前ならすっきりと贅肉を落した演奏になっていたものだ(例えば「英雄交響曲」など)が、今ではもうどっしりした音を響かせるようになった。コーダの終り近くでのフォルテ3つの個所など、実に豪壮な構築である。
 その一方、序奏のあとで、主部のアレグロに入った直後のトランペットを中心としたクレッシェンドには、小澤が若い頃に聴かせたあの勢いの良さが蘇っていた。いずれにせよ、この演奏では、彼の健在ぶりが感じられたのは確かである。

 彼の指揮がこれ1曲だけとは残念。
 カーテンコールでは、久しぶりに彼が袖から走って出て来る姿を見た。だが指揮台の傍に、おそらくテレビ収録か何かのケーブルが散在していたのだろうか、彼が何度かそれに足を引っかけ、躓きそうになったのにはヒヤリとさせられた。とすれば、彼の体調や動き方を考慮に入れなかった収録スタッフのミスだろう。
 それに、どこの放送局か知らぬが、この曲のあとで舞台セット替えをする際に、オケや聴衆を待たせたままマイクのセッティングに延々と時間をかけていたのは、放送局の風上にも置けぬ仕事ぶりだ。昔、私どもがオーケストラ演奏会の収録をしていた頃には、楽器の配置転換と同じペースでマイクのセッティングをやったものである(そうしなければ、あの伝説的なステマネの「マーちゃん」こと宮崎隆男氏から怒声を浴びせられただろう)。

 後半はナタリー・シュトゥッツマンの指揮。マーラーの歌曲集は、「少年の魔法の角笛」から「ラインの伝説」「浮き世の生活」「天国の生活」(第4交響曲の終楽章)、「この歌を作ったのはだれ」「トランペットが美しく鳴り響くところ」「不幸な時の慰め」の6曲と、アンコールとして「リュッケルトの歌曲集」から「美しさのゆえに愛して下さるのなら」。
 リディア・トイシャーの声は初々しく可憐で美しかったが、こちらの席が1階19列という上手隅に近い位置だったせいか、オケにマスクされることが多く、もっと指揮台の前に出て歌って欲しかったところだ。というより、指揮者がもう少し歌をよく響かせるようにオーケストラのバランスを調整するべきだったのではなかろうか。

 ドヴォルジャークの「7番」は、かなり豪壮に鳴っていたけれども、それだけでは何にもならない。その頂点と頂点との間の沈潜した部分に、次なる昂揚への期待を抱かせるような緊張感が不可欠なのであり、そうでなければ曲の形式感が曖昧になってしまう。
 とはいえ、さすがに歌手らしく、第2楽章のようなカンタービレの多い個所では、ここぞとばかり大きな表情でオーケストラを歌わせていた。
 9時15分演奏終了。
      →別項 モーストリー・クラシック12月号
      →別項 信濃毎日新聞
      →(談) 北海道新聞

コメント

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同じ日に1階12列目で聴きました。マーラーの1曲目については私もおおむね同じ思いを持ちました。ただし、2曲目以降の指揮者(とオーケストラ)は音量を修正したなと感じました。
後半のドヴォルジャークが「豪壮」というのは概ね同意です。なお、曲想の変わる直前とかでルフトパウゼをかけたり、アゴーギクを変化させたりしていたことは指摘しておいてよいかと思います。ただし、多用していたので好き嫌いが分かれるところです。

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