2017-11

2017・8・6(日)ザルツブルク音楽祭(5)「室内楽コンサート」

     モーツァルテウム大ホール  7時30分

 ウィーン・フィルのコンサートマスターの1人、ライナー・ホーネックをリーダーとするウィーン・フィルのメンバーによる室内楽演奏会。
 プログラムは、R・シュトラウスの「カプリッチョ」からの「六重奏」、モーツァルトの「クラリネット五重奏曲」、ハンス・ヴェルナー・ヘンツェの「弦楽六重奏のための幻想曲《テルレスの青春》(若きテルレス)」、最後にメンデルスゾーンの「弦楽八重奏曲」。

 今夜は、この同じ時間帯に、川向こうの祝祭大劇場では、ムーティの指揮で、アンナ・ネトレプコを題名役とする「アイーダ」の初日公演(これもウィーン・フィルだが)が行われているはずであった。例のごとく手配の出足が遅かった私は、そのチケットを取り損なったというわけだが━━。

 しかし、このモーツァルテウムの美しいホールで、ウィーン・フィルの「別の」メンバーが演奏する、夢のように美しいR・シュトラウスの「六重奏曲」や、モーツァルトの「クラリネット五重奏曲」を聴いていると、ムーティもネトレプコも何にかはせむ、という心境になって来る。これは、負け惜しみではなく、本当である。

 1曲目のシュトラウスの「カプリッチョ」の六重奏が始まった瞬間など、こんな魔術のような音楽があろうか、と息を呑み、心も体もとろけるほどうっとりさせられてしまったほどだ。かように、ウィーン・フィルの弦は、この世のものならざる夢幻的な音色をつくり出していたのである。

 モーツァルトの「クラリネット五重奏曲」を吹いたのは、首席奏者ダニエル・オッテンザマーだった。有名な父君エルンスト氏が先月急逝したばかり。プログラム冊子にも、その追悼文が掲載されており、聴衆もそれを知っていた。そうした思いも含め、子息の流麗で温かいソロに、ひときわ高い多くのブラヴォーが飛んだのも当然であろう。

 ヘンツェの「テルレスの青春」(若きテルレス)は、15分ほどの作品で、もともとは映画のための音楽のはず。ナマで聴いたのは今回が初めてなのだが、ホーネックらウィーン・フィルのメンバーの手にかかると、あのヘンツェの作品すらが、すこぶる温かい穏やかな音楽に聞こえてしまうから不思議なものだ。

 そして最後がメンデルスゾーンのオクテットだが、「1人のソリストと7人のメンバーのためのコンチェルト」(故ルイ・グレーラー)という見方さえあるこの曲で、ホーネックのリーダーとしての存在が明確にされつつも、あくまで完璧な均整を備えた8人のアンサンブル━━となっていたのが、この日の演奏なのであった。その音の柔らかい溶け合いは、他に例を見ないだろう。第1楽章での流れの良さと、限りなく昂揚して行く演奏は、ここでもう拍手を贈りたくなるくらい、圧巻であった。

 ただ、こんな勢いで第1楽章から飛ばしていては、フィナーレなど、さてどうかな、と思ったが・・・・案の定、第3楽章以降は━━もちろん第1楽章と比べればのことだが、少々精彩を欠いたような気がする。第4楽章の中ほど、8人が先を争って突進するかのような激しい曲想の個所など、今一つエネルギー感が薄れていたような。

 超満員だったこのホール、換気が悪くて、空気がこもって来る。まさか奏者たちも、それで疲れたわけでもあるまいが━━昨日のマチネーでもそうだったが、私はこういう空気には弱いので、先に疲れてしまう。
 9時40分頃終演。昼間降っていた強い雨もすでに上がり、かなり涼しくなっていたが、新鮮な大気に触れて安堵する。この会場は、ホテルに比較的近いので楽だ。

コメント

残念です

迂闊なことに、エルンスト・オッテンザマー氏の急死は、初めて知りました。私も彼らの室内楽は、あまた聴いており、その中心メンバーで、日本でもつねに女性ファンに囲まれていた彼の急逝は残念でなりません。息子さん達の活躍が救いでしょうか。

一期一会

エルンスト・オッテンザマーさんが、先月61才という若さで急逝されてダニエルさん、アンドレアスさん、お二人の哀しみを思うと切ないです。昨年2月に「ザ・クラリノッツ」として来日なさった三人。「一期一会」という言葉が胸にしみます。ご冥福をお祈りいたします。

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