2017-08

2017・7・31(月)ゲルギエフ指揮PMFオーケストラ川崎公演

      ミューザ川崎シンフォニーホール  7時

 ワーグナーの「タンホイザー」序曲、ブルッフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」(ソリストはダニエル・ロザコヴィッチ)、シューベルトの「交響曲第8番《ザ・グレイト》」という、PMFオーケストラの首都公演としてはちょっと珍しいプログラムである。

 PMFオーケストラによるブルッフの「第1協奏曲」は、4年ほど前に、準・メルクルとワディム・レーピンがやったのを東京公演で聴いたことがある。だが、メイン・プロにマーラーやショスタコーヴィチの交響曲など、巨大編成・巨大音響の作品でなく、シューベルトの交響曲を選んだという例は、稀有のケースではないか。
 「タンホイザー」序曲にしたところで、打楽器陣にも僅かの出番はあるものの、それほどの大編成という作品ではない。だから、アカデミー生の活躍の場はいくらか制限されてしまうのではないかと、他人事ながら多少気になっていた。ただ、札幌でのコンサートでは、準・メルクルや大山平一郎の指揮で大編成のいろいろな作品を演奏しているから、PMFとしても、教材としては特に不足はなかったのであろう。

 今日の演奏では、弦が15・13・11・9・7という編成。
 また、近年のゲルギエフの楽器配置法━━第1ヴァイオリンとコントラバスを下手側に集め、最高音域と再低音域との融合を狙うという主義を覆し、今回はヴァイオリン群を下手側に、コントラバス群を上手側に、ヴィオラを上手側前面に配置するという伝統的(?)な方法を採っていた。何故このような配置だったのかは、私には判らない。
 また、ゲルギエフは、コンチェルト以外は珍しく暗譜で指揮していた。これも滅多に見られない光景ではなかろうか。

 なにより、ゲルギエフが指揮するシューベルトの交響曲というのは、初めて聴いたような気がする。もちろんこれも弦15型で、木管は倍管編成が採られていた。分厚く壮大な、堂々たる「ザ・グレイト」であったが、特にロマンティックな演奏スタイルというわけではない。
 だが、第1楽章と第4楽章におけるソナタ形式の扱いは、いかにもゲルギエフらしくて面白い。彼は、再現部では同じ主題群にもいっそうの力感を持たせ、デュナミークの起伏や対比を更に増大させて演奏させ、常に音楽の劇的な展開と昂揚感を増して行く、という手法を採る。ゲルギエフはかように、ソナタ形式にさえも劇的な展開という要素を導入する指揮者なのだな、ということが判って、興味深かった。

 ブルッフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」でソロを弾いたダニエル・ロザコヴィッチは、ストックホルム生れの16歳とのことだが、非常に清楚で純な表情の演奏を聴かせる、注目すべきヴァイオリニストだ。
 北欧の清澄透明な音色、などとこじつけるつもりはないけれども、いかにも透き通って美しい音色と叙情性が印象に残る。ゲルギエフが採る遅めのテンポを楽々と保たせ、沈潜した第2楽章でもじっくりと歌い上げる。
 アンコールでのバッハの「無伴奏パルティータ第2番」の「アルマンド」でも、清廉な息吹が好ましい。また、独りで弾くロザコヴィッチを、ゲルギエフが下手のドア近くに立ったまま終始じっと見つめていたのも、若手の育成に熱意を燃やす彼の姿勢を垣間見せ、印象的だった。

 今年のPMFオーケストラ、金管セクションには多少の不慣れな雰囲気が感じられないでもないが、弦楽セクションには瑞々しく張りがあって、なまじのプロ・オケの心胆を寒からしめるだけのものがあるだろう。9時15分終演。

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