2017-08

2017・7・23(日)チョン・ミョンフン指揮東京フィル マーラー「復活」

     Bunkamuraオーチャードホール  3時

 第1楽章の原典版「葬礼」を含めれば、今週は「復活」を3度も聴いたことになるか。

 私も、昔ほどにはこの曲に現を抜かしているというほどでもないけれど、自分の気に入ったタイプの演奏にぶつかれば、やはりそれなりに酔うし、特に全曲最後のクライマックスで、合唱のパートに独唱者も参加して「・・・・wirst du,Mein Herz,in einem Nu!」と絶唱する個所━━つまりソプラノならG-F-Esのあと髙いBに上がり、次いでG-F-Es-D-Es-Fと歌って行く個所などで覚えずジンとしてしまうような感覚は、まだ持ち合わせているつもりである。

 独唱者たちが合唱とほぼ共通したパートを一緒に歌うのは、ベルリオーズの「ファウストの劫罰」第1部最後の「学生たちの合唱」にファウストとメフィストフェレスが参加するという例もあるが、不思議に迫力を感じさせるものだ。
 余談だが、20年近く前、サンクトペテルブルクでゲルギエフがこの曲を指揮した時には、ソリストたちには一緒に歌わせず座らせたままだったので、すこぶる迫力を欠いた。ちなみにその時のソプラノは、未だ無名時代のアンナ・ネトレプコだった。

 それはともかく、今日のチョン・ミョンフンと東京フィル(コンサートマスター三浦章宏)、新国立劇場合唱団、安井陽子(S)、山下牧子(Ms)によるマーラーの第2交響曲「復活」は、率直な演奏ながら、なかなか心に迫る温かい、味のある演奏であったと思う。

 このところ、チョン・ミョンフンの指揮するドイツ・ロマン派の作品は、先年の「トリスタンとイゾルデ」でもそうだったが、誇張やハッタリなどの手練手管を一切排した、極めてストレートな表現になって来ているようである。第5楽章での練習番号【14】の前の打楽器による猛烈なクレッシェンドなど、「Molto riten.」の指定もさほど強調されず、意外にあっさりしたものだった。
 だがそのストレートなタッチが、むしろ凄味を生む場合もある。第3楽章での、あの「魚に説教する聖アントニウス」の主題が快適なテンポで流れて行くその中に、しばしば強烈な音の一閃を繰り返して聴き手の度肝を抜くマーラー独特の仕掛け━━それが、これほど自然に、無造作なほど率直に再現されながら、しかも劇的な衝撃が生み出されていた演奏を、私はかつて聴いたことがない。

 チョン・ミョンフンはいま、指揮の身振りも、もはや無駄な動きを一切なくした、簡略なものにして、最小限の身体の動きでオーケストラを燃え立たせることのできる境地に達しているようにみえる。

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