2017-09

2017・7・15(土)佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ「フィガロの結婚」

       兵庫県立芸術文化センター  2時

 恒例の「佐渡裕のオペラ」。今年はモーツァルトの「フィガロの結婚」。

 14日から23日までの間に全8回のマチネー公演が行われている。歌手陣はダブルキャストで、5回が外国人中心組、3回が日本人中心組。ただし後者は26日の姫路と29日の篠山の公演でも歌う。指揮がもちろん佐渡裕、演出がまたデイヴィッド・ニース、舞台美術がロバート・パージオラ。

 今日は日本人中心組の初日で、高田智宏(アルマヴィーヴァ伯爵)、並河寿美(伯爵夫人ロジーナ)、町英和(フィガロ)、中村恵理(スザンナ)、ベサニー・ヒックマン(ケルビーノ)、志村文彦(ドン・バルトロ)、清水華澄(マルチェリーナ)、渡辺大(ドン・クルツィオ/ドン・バジリオ)、晴雅彦(アントニオ)、三宅理恵(バルバリーナ)という顔ぶれ。兵庫芸術文化センター管弦楽団、ひょうごプロデュースオペラ合唱団。字幕付き上演。

 外人組の方はどうか知らないけれども、わが日本人組の出来は、なかなか立派なものである。
 中村恵理の才気煥発タイプのスザンナは相変わらず魅力的で、先頃の新国立劇場での同役よりも━━演出の関係もあるが━━開放的で生き生きしており、観ていて楽しく、歌唱も完璧だ。
 また、キール歌劇場専属歌手として活躍している高田智宏も風格のある安定した歌唱で「中庸を得た封建領主」たる伯爵を描き出していた。

 他にも、並河寿美の声の柔らかい美しさ(昔トゥーランドットで凄味を利かせた同じ人とは思えないほどの)は印象的だし、清水華澄の先日のジークリンデとは打って変わったコミカルな温かさもいいし、晴雅彦のいつに変わらぬどぎついアントニオも面白い。ところどころ声が聞こえにくくなるという人も中にはいたけれども、何よりアンサンブルという面で実に良いバランスが構築されていたことは、日本人歌手集団ならではの美点であろう。

 佐渡とオーケストラは、序曲がまず極度にワイルドな演奏だったのには仰天。さながら「フィガロの怒り」とでも喩えたくなる序曲だった。その後は落ち着いたものの、基本的には「激動の一日、嵐の人間ドラマ」といったアプローチというか。
 それがこのオペラの音楽に適しているかどうかは考え方次第だが、私はこの「フィガロの結婚」の音楽の本質は、決して「優雅典麗」なものではなく、生々しい人間ドラマをあからさまに表出したところに在ると思っている。

 だが、デイヴィッド・ニースの演出はいつもの如くで、生々しい人間ドラマとはほど遠く、全くのトラディショナルなスタイルだ。「ここのお客さんには、こういう解り易い演出がよい」というのが、劇場側の本音のようである。ただし、その範囲内では極めて細かく、演技的にも隙なく作ってあり、「解り易さ」という点では申し分なく、ほぼ満席の観客から明るい笑いを誘っていた。

 一つ、これはニースのアイディアか、佐渡のアイディアか聞き漏らしたが(※)、第3幕の結婚式の場面で、祝いの歌を歌う「2人の少女」の役を、バルバリーナとケルビーノに受け持たせていたのが注目された。ここではバルバリーナが、「ご機嫌を取っときなさいよ」とばかりケルビーノを煽り、ケルビーノは渋々歌詞カードを見ながら面倒くさそうに歌うという設定らしくて、なかなか面白く、気に入った。
 ※劇場からあとで教えてもらったところによれば、これはニースのアイディアだった由。

 休憩は第2幕のあとに1回のみ。5時30分頃終演。

コメント

こんばんは

こんばんは、いつも楽しみにレビュー拝見しております。

個人的にフィガロの歌唱が物足りなく感じたのでしたが東条様はいかがでしたでしょうか?新国の方が皆さん歌が上手い気がしました。価格が違うので比べるのは野暮かもしれませんが…。私が3階席サイドだったからか特にフィガロの歌は演奏でかき消されていると感じる事が多かったです。全体的にはとても楽しく観られて満足していますし好きでした。

決して批判がしたいわけではなく、自分が気になった部分に対しての感想をお聞きしてみたくてm(_ _)m どうぞよろしくお願いいたします。

どうも今回は日本側キャストの勝か。今回伯爵夫人を歌った代役歌手はびっくりするような不安定さを露呈した。
4幕聞かせどころのフィガロのアリアでは(好きなところ)性急な棒のおかげで上滑りした。歌もオケに消されて。しかし歌の背後にモーツアルトの才能が見え隠れして涙がでそうだった。家ではとかく最後まで付き合わないビデオ鑑賞だがやはりなまは最後まで付き合えていいものだ。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2750-4b49645c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」