2017-09

2017・7・6(木)パスカル・ロジェ×束芋

     浜離宮朝日ホール  1時30分

 そう度々は行なわれない、珍しいタイプの演奏会が開催された。
 ピアノのパスカル・ロジェと、現代美術作家の束芋(Tabaimo)のコラボレーション━━音楽と映像美術の「協演」である。
 といってもこれは、2012年に開催されたことがある由。今回は再演とのことだ。

 手っ取り早く言えば、パスカル・ロジェが舞台上で、ドビュッシー、サティ、ラヴェル、吉松隆の小品を多数演奏する。音楽のイメージの基調は、フランス印象派のそれである。その背景、舞台いっぱいに吊り下げられた巨大スクリーンに、束芋によるさまざまな映像━━アニメーションが、プロジェクターで投映される。

 面白い試みだし、こういう演奏会は盛んにプロデュースされていいと思うのだが、何というか・・・・音楽と視覚映像とがこのように同時に展開されることによって、そこにどういう感動が体験できたか、ということになると、何とも言いかねる。

 私自身も、たとえば日本の陶器の画集を見ていた時に、ラジオから偶然聞こえて来た武満徹の音楽が視覚と合致して、形容し難いほどの陶酔に誘われたことはある。また、クルマで人気のない海岸を走っていた時、岩にぶつかる白い波頭の上に無数の海鳥が夕陽を浴びて舞っている光景と、偶然カーラジオから聞こえて来たシベリウスの「レンミンカイネンとサーリの乙女たち」とがあまりに鮮やかに一致して、陶然としたことはある。

 だが、このように演奏会場に来て、椅子に身動きもせずきちんと座って、ピアノがあり、スクリーンがあり、・・・・さあどうぞ、この音楽と、同時に映されるアニメーションをご覧下さい━━とお膳立てされ、なかば強制されると、途端に構えてしまって、すべてを客観的に見てしまうのである。

 もっとも、だからといって、感動するのが音楽と視覚とが偶然に一致した時だけかというと、そうでもなく、場面と音楽とが巧みに一致するよう設計されたオペラや映画などでは、それなりにうっとりさせられるのだから、勝手なものである。
 所詮、異質なもの同士が完璧に合致して感動を生ましめるかどうかは、受け手のその時の感性による、ということなのだろう。いや、そもそもそんなことを、観ながら、聴きながら考えてしまうのだから、余計いけない━━。

 いずれにせよ、暗いステージから響いて来るパスカル・ロジェのドビュッシーやラヴェルは、素晴らしく気持よかった。もちろん映像も美しかったし、それらがフランス印象派の音楽と一脈通じる要素も、こちらなりに感じられた。ただ時々、眼を閉じてしまって、ドビュッシーの音楽だけに集中してしまう、という瞬間もあったのだが・・・・。
 70分の長さ、と予告されていたが、実際はもう少し長かったのでは? 
 いいコンサートで、興味深い企画だった、ということだけは、繰り返し申し上げておきたい。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/2743-70950739
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」