2017-11

2017・7・2(日)ベルリーニ:「ノルマ」

    日生劇場  2時

 日本オペラ振興会制作の新プロダクション。日生劇場、びわ湖ホール、川崎市スポーツ・文化総合センター、藤原歌劇団、東京フィルの共同制作公演として、またシリーズとしては藤原オペラと日生オペラの合同━━という、入り組んだシステムになっている。要するに中味は藤原オペラで、たくさんの関係団体あり、ということだ。

 ダブルキャストによる公演だが、マリエッラ・デヴィーアがノルマを歌う組は秋のびわ湖ホール公演でも観られるから、今回は全て日本勢が歌う組の方を観ることにした。その方が、今の日本のオペラ界の趨勢が判って面白い。
 有名外国人歌手だけ観てどうのこうのと言うのは、趣味としてはそれでもいいかもしれないが、仕事としては充分な姿勢ではない。それに今回は、ノルマを小川里美、ポリオーネを藤田卓也が歌い、アダルジーザに米谷朋子、オロヴェーゾに田中大揮、といった、いい歌手陣である。

 小川里美は、ノルマはこれが初役だという話だが、歌唱といい、気品と威厳に満ちた長身の舞台姿といい、実に良いノルマだと思う。今回のようにたった1回の舞台ではなく、場数を踏めば、どこへ出ても立派なノルマになれる人だろう。
 ただ今回の舞台では、この役の崇高さはよく出ていたものの、銅鑼を鳴らす場面で爆発する「怒り」の表現が、どうも不充分である。これは、演出に原因があるだろう。

 残念ながらこの日の登場人物たちの描写は、どれも一面的で、性格に裏や襞といったものが感じられない。
 演出は粟国淳だが、彼はプログラム・ノートに「ベルリーニの音楽は、兵士たちが戦の合唱で気勢を上げる個所でさえ、ヴェルディのそれと違って激さず、むしろ静謐な音の中へ云々」と書き、演技に関しては「むしろ日本の能のような・・・・」という趣旨のことも指摘している。なるほど、そう言われればこの日の舞台の演技は、極めて抑制されていた印象が強い。
 だが、それらは確かに実績ある優秀な演出家としての彼の一つの見解であるには違いないが、その音楽の解釈と、そこから生まれる演技表現は、私には全く賛意を表しかねる類のものである。

 フランチェスコ・ランツィロッタという人の指揮は今回初めて聴いたが、まあ何とも平板で鈍重で、緊迫感も皆無で、生気が感じられぬ。東京フィルも最近では珍しいような古色蒼然たる音を出し、ベルリーニの音楽から熱気と緊張感を失わせていた。

 結局、今日の「ノルマ」を盛り上げていたのは、歌手たちの「歌唱」である。
 前述の小川里美の他、注目の藤田卓也は期待通りの伸びのある声で、力強いポリオーネを歌っていた。オロヴェーゾの田中大揮は、巨躯から響かせる底力ある声で、全ての点でこの役に相応しかった。アダルジーザの米谷朋子も、細かいヴィブラートがちょっと気になり、またノルマとの声の対比があまり際立っていない、という問題もあろうが、清純な声質である。他にクロティルデに但馬由香、フラーヴィオに小笠原一規。

コメント

小川里美は歌唱、姿ともノルマの気品と激しさあり、1回では勿体ない、
田中大輝立派な見栄えするバス。 激情に欠ける演出ではあるが、照明も含め
舞台はまずまず美しく、かなり整理されていた。

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